もう少しで花火が上がるね。
そんな会話を由希くんとしていた時、近くに座っていたカップルの彼女の方が持っているわたあめが目に映った。
すごくふわふわしていて、おいしそう。
じっとわたあめを見ているのに気付いた由希くんは、買いに行く?と気づかってくれる。
黙ってコクリと頷くと、優しく笑って立ち上がった。私も立ち上がって由希くんについて行く。


「……あ」

「どうしたの?」


かき氷。大きな氷から作るかき氷なんて、久々に見た。
…すごくおいしそう。
動かない私に由希くんは、かき氷にするかと聞いてくれたけど、首を振ってわたあめの所まで行った。
わたあめを作っていたおじちゃんはサービスで、すごく大きくしてくれて嬉しかった。
戻るとき、さっきのかき氷が目に映ってやっぱり欲しいな…と思った時、由希くんがちょっと待っててと言うと消えた。


「お待たせ」

「…かき氷買ったの?」

「あ、うん」


行こうか、と由希くんは言って歩き出す。もとの場所に戻ると、由希くんはかき氷を食べだして、隣でしゃくしゃくと聞こえる。
やっぱりかき氷も買えば良かったな、と由希くんの食べる姿を見て思った。
名前、と由希くんが私を呼んで、向いた時、口の中に冷たくて甘い味が広がった。
おいしい?と首を傾げて言う由希くんに、うんっと大きく頷くと笑った。


「私のもあげる」

「え?俺は別にいいよ」

「いいから。はい、あーん」


ちぎったわたあめを由希くんの口の中に入れると、由希くんはありがとうと笑う。
バーンと大きな音がして、ぱっと空を見ると大きな花火が上がっていた。
また来年も来ようね。隣の由希くんに言うと、そうだねと返事が返ってきた。




ふわふわあまい
(来年も食べっこしよ)(え、あ…うん)(あ、顔あかーい)



20110730