わいわいと色々な所からはしゃぐ声が聞こえてくる。
楽しく笑う声が響いて、屋台の光りは優しく照らすように両脇の道沿いにある。
たくさんの人がいて、これが人の波っていうものなんだと思った。
一緒に祭りに来ていた蜜柑ちゃんと蛍ちゃんと逸れないように一生懸命ついていった。


「……あれ、」


ふと顔をあげた時には二人の姿は見えなくて、知らない人たちの波の真ん中にポツンと立っていた。
とりあえず人の少ない所に行こう。
そう思って足を進めた時に名前を呼ばれた気がして辺りを見回した。
気のせい、かな。
止めていた足を進めると、前から見覚えのある人が人の波をかき分けながら私の名前を呼ぶ。


「名前!」

「……流架くん」


荒い息遣いをした流架くんは私の目の前で止まった。
少しだけ汗をかいていて、どうしたのだろうと思って本人に聞いてみた。
棗くんとその妹の葵ちゃんと祭りを見に来ていた時、焦る蜜柑ちゃんを見つけて事情を聞いたらしい。


「それで探しに来てくれたの…?」

「あ、いや、ちがっ…う、くない、けど…」


なぜかしどろもどろになりながら流架くんは、体が勝手に…と言葉を続けた。
え、無意識で…。私の呟いた声が聞こえたのか、顔を真っ赤にして背中を向けた。
それから、佐倉たちのところ戻るんだろ、と言って背中を見せたまま私の手を掴んで歩きだした。


「こ、これは別に、はぐれないためだけだから…!」


そう言ってズンズンと前に進んで行く流架くんに引っ張られながら歩いた。
流架くんの手がすごく熱い。
ぎゅっと手を握られるだけじゃなくて、握り返すと一瞬流架くんの手の力が弱くなったけど、一時経つとさっきよりも強い力で手を握り返してくれた。




はぐれない方法
(る、るかくん)(なに?)(ドキドキしてる…っ)(お、れも)


20110726
ツンデレ流架ぴょん……ムフフ。ツンデレ大好物です。