いくら二人を探し回っても見つからなくて、一度家に戻ろうと思って足を向けた時、透ちゃんの声が遠くから聞こえた。
なんだか、すごく焦った声を出している様子。
急いで声の聞こえる方に行くと、透ちゃんが土の山を一生懸命掘ろうとしていた。


「透ちゃん、」

「お母さんが…!」


手を泥だらけにしてまでも、お母さんの写真を出そうとする透ちゃん。
私はどうしていいのか分からず、ただ透ちゃんを抱き締めた。
震えていて、どことなく熱い。……もしかしたら、熱かもしれない。
そう思った時、紫呉くんが透ちゃんを抱えて、家に戻る。

布団を敷いて透ちゃんを寝かせると、お母さんの話をしてくれた。
優しそうに笑ってお母さんの話をする透ちゃんは、本当にお母さんが大好きなんだな、っていうのが伝わってくる。
私は黙って透ちゃんの手を握ったまま話を聞いていた。

目を閉じて眠りに入った様子の透ちゃんから目を逸らして、近くに立つ由希ちゃんを見上げた。


「…由希ちゃん、透ちゃんの荷物…」

「……分かった。俺がなんとかするから、」


ヒナまで泣いちゃダメだろ。由希ちゃんはそう言うと私の頭を撫でて部屋を出ていった。
部屋に残った透ちゃんと紫呉くんと私。
紫呉くんと少し話して、透ちゃんをこの家に住まわせたらダメかと聞くと、笑っていいよと言ってくれた。
もう一度、ぎゅっと透ちゃんの手を握ると、透ちゃんは小さな声でお母さんと呼んだ。



分け合えるならば
(悲しみを分け合って)(喜びを倍にできたら)



20110720