明るくて、いつも笑っているような人。それは安藤翼という男に似合う言葉だと思う。
それと正反対の、暗くて笑わない人。それは私に似合うんだろう。
別に暗いわけではない。別に話しかけられれば喋るし、感じ悪い雰囲気を出してはない。
だけど、近づくなオーラが出ているっていうのは自分でも分かる。
女の子とも話すのは、二言ぐらい。
だからもちろん、男の友達も女の友達もいない。

なのに、そんな私に安藤翼は絡んでくる。


「よっ!今日も相変わらずなご機嫌で」

「うるさい」

「ははっ、よく言われる」


どうしてこの男は、私がどんなに言っても話しかけてくるんだろう。
そんな事を何度も何度も考えた。だけど結局理由は分からないまま。

ハッキリ言って迷惑なんだ、こんな風に付きまとわられるの。
そう思うのに、どうしてなんだろう…。
美咲ちゃんとあの男が楽しそうに喋ってるのを見ると、胸が苦しくなる。
その苦しさをかき消すように、私はあの男の悪口を頭の中で考える。


いつものように昼休みに一人で窓の外を見ていた。
すると、あの男が近寄ってくる。


「よー、なに?お前ひとり?」

「……」

「ちょ、シカトはきついだろ!」


コツンと小突かれた頭が、じんわりと熱くなっていく。
心臓が…、張り裂けそうだ……。
天気いいよなー、と笑ったこの男になんだか心を許した気がした。


「あーっ!お前いま笑ったろ!」

「は、」

「お前、絶対ぇ笑ってた方がいい!」


歯を見せてニコニコと笑うこの男の笑顔は、なんだか眩しかった。
俺、名前の笑った顔好きだわ。可愛いし、その言葉にドクンと心臓がはねた。
合図を出されたように顔が熱くなっていく。


あぁ、私はいま気付くだなんて、とても無駄な時間を過ごした。
どうして、自分に正直にならなかったのだろう。


目の前で笑う安藤翼を見て、私も笑った。



君と僕が交わって
顔赤い、そう言って私の頬に手が伸びて彼は撫でてくれた。



20110715
バースデー短編!翼おめでとうっ!