レオが消えて結界が緩められたまま、チャンスは今しかない。
棗はそれを分かったのかスミレにアリスを使え、と言った。
スミレが言うのは、南方の方にある倉庫に大量の火薬と薬品があるらしい。
それを聞いた棗は考えるようにして、俺の合図で走れと指示を出した。それはもちろん私にも言っていて、だけどそれに従うことなんて出来ない…。


「行くぞ………行け!」



「…蜜柑、私、残るよ」

「何を言うとるんや!棗に言われたやろ!」

「大丈夫。すぐ追いつけるよ。棗と一緒に行くから」


蜜柑は私の目を見て、コクリと頷いて絶対に戻って来てなと言った。
ピタリと足を止めて振り返った。
その時見た棗の目は凄く真剣で…。


「お前にこの結界の中、そんな距離の倉庫に火をつける力なんか

「あるよ。私がいれば簡単でしょ」

「…なんでお前」



私、残るよ。いつまでも逃げてられない。棗を一人になんて出来ない。


蜜柑とスミレには早く行ってと言うと、戸惑いながらも二人はこの倉庫を出て行った。
残ったのは私と棗とレオたちだけ。
ここで火をつければ、自分たちもレオたちも火の中に。
棗がゆっくりドアの方に近づいて行った時、蜜柑が飛んできて棗を倒した。


「てめえ…なんで戻ってきた」


傍で棗と蜜柑が口喧嘩をしているのを聞いていると、いつも学園で過ごしてきたことと同じで、少し安心をした。
だけどそのせいでレオは力を使ってしまい、棗くんも、油断していた私も一気に体がだるくなった。
一人だけ安全の蜜柑に目を向けると、私の言いたいことが分かったみたいで、頷いた。
それから二人で棗を担いでひたすら走った。



想いをのせて
(ひたすら)(走る)


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