雲雀恭弥という男を知っているだろうか。

あの人気少年漫画のキャラクター。並盛中学校の風紀委員長を務めながらも不良のトップに君臨し、見境なくトンファーを振り回す暴れん坊理不尽僕様中二病患者である。


そして、それが僕だ。


何を言っているのかわからないと思うが、僕だってわからない。納得のいくまで懇切丁寧に説明してもらいたい。

交通事故に遭って死んだと思ったら、赤ん坊の姿になっていた。前世の記憶を持ちながら転生したのだとわかった。ありえないような話ではあるが、転生というならばまだ理解は出来る。


そんな僕に付けられた名前は雲雀恭弥だった。


いや、まだ、まだわかるぞ。親が熱烈なリボーンのファンで子供に好きなキャラクターの名前を付けてしまったということならば普通のことだ。


三歳の誕生日にトンファーを貰った。


わからない。これはわからない。

全くわからないし、住んでいる街が並盛という名前なのもわからないし、近所には並盛中学校とかいう平面的な世界で聞いたことのある学校があるのもわからないし、トンファーを貰って以来、謎の戦闘力を誇る父親から厳しい修行をさせられて九歳の頃には野生のクマを素手で倒せるほどになってしまっていたのもわからない。


しばらく現実逃避をして生活をしていたが、小学校四年生のとき、ついに恐れていた事態が発生した。

「お前が京子を助けてくれた男だな!」

笹 川 了 平 っ ぽ い の が 居 た 。

下校中に突如現れた笹川了平っぽい少年の話によると、不良の高校生に絡まれていた妹を僕が颯爽と助けたらしい。

なにそれ記憶にない。

いや、もしかしてこの前の、とんでもなく機嫌の悪いときにその辺の不良に八つ当たりをしてしまったときのアレか?
まさかあの場に笹川京子っぽい子が居たのか?

あの、ほんと、八つ当たりしたのは謝まるんで、僕と笹川京子の出会いをなかったことにしてくれませんか神様。

「俺とお前は良い友になれると思うぞ!」

友達宣言をされた。

僕が雲雀恭弥であると、うっすらと認めた日のことだった。


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