「骸、どうしたんだその腕!」

いつものようにアジトの庭の掃除をしていると、様子を見に来たランチア先輩が顔を青ざめてそう言った。

腕?

意識を向けてみれば、つぅーっと液体が右腕を伝っていく感覚がした。
不思議に思って見ると、右腕が真っ赤に染まっている。

血だ。

右腕から出血している。気が付かなかった。
血の量こそ多く見えるが、傷はそこまで浅くなさそうだ。

「どこかに引っ掛けたのかも」
「待ってろ、今手当てしてやるから」

そう言うとランチア先輩は慌ててアジトの中へと走って行った。
そんなに慌てなくても。致命傷ではないし、痛くもない。いや、実際は痛いのだろうが、


____あいにく私には、およそ痛覚と呼べるようなものが全くと言っていいほど、無い。


原因は分からない。転生してから、一度も痛みというものを感じたことがなかった。
だから人体実験も、気持ちが悪いというだけで痛くなかったため、やり過ごせた。

地面を見れば、血が数滴落ちている。
庭を汚してしまったことを、申し訳ないなとぼんやり思った。




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