ソファに座って年末恒例の特番を見つめる。

今年は天ぷらを乗せた年越し蕎麦を食べた。朝也はえび天を頬張り、さくさく言わせて食べて、何だかしつこいくらい美味しいって言ってた。他にはちくわやジャガイモ、ナスとたくさん揚げ、最後に大きなかき揚げを半分こして2人で食べた。

たくさん食べすぎた、とお腹を撫でていると、後ろから腕が回ってきて抱きしめられた。さっきまで食後の緑茶を淹れるためにヤカンでお湯を沸かしていたのに、いつの間にか火の音はしなくなっている。
朝也の少し冷たい鼻が頸を掠めた。

「どうしたの、朝也」
「……兄さん、シたいんだけど」
「…いきなりすぎない?」
「頸見てたら、なんか」

振り向いて、朝也が本気なのが分かると、ええ、と内心ドン引きする。
ただでさえそこそこお腹いっぱいだからそんな運動したくない。そもそも年末だしそんな気分にはならないのに。

「…嫌」
「え…い、いつも良いって言ってくれるじゃん」

確かに、あんまり断ることはない。こっちの負担を気遣ってくれるから回数は多くないし、朝也はしたがってるけど誘ってくることは少ないから、誘われた時はなるべく応えることにしている。でもそれは通常の時の話。

「だって年末なのに」
「………兄さんお願い」

朝也はしょっちゅう強請ってくる。たくさんの生徒を魅了したそのズルすぎるその顔で、お願いと。確信犯だ。

「えー……」

眉をしょんぼりと下げる朝也。

「明日、朝からおせちの準備あるんだけど」
「知ってる。兄さん、伊達巻好きだもんね、俺美味しいの買ったよ」
「それは関係ないけど…のんびりしたいよ、正月くらい。腰痛いとおせちの準備もしんどくて嫌…」
「全部俺がやるよ。兄さんはこたつでのんびりしてていいから、ね?」
「ね、って…」
「移動が辛かったら俺抱っこしてあげるから」
「何言ってんの」

そこまでしてシたいか。
ね、お願い兄さん。朝也が耳元で囁いてきて、こめかみに軽くキスを落とす。そうすれば俺が譲歩してくるのを知っているから。
はあ、とため息をつくと朝也はすぐ分かったらしく嬉しい、と言った。

「1回ね」
「2回がいい、ね?年明けの瞬間、兄さんのこと抱きしめてたい」
「…はいはい」

結局、朝也は裏切って3回してきて、俺も流されまくった結果、元日まるまる身動き取れない羽目になった。

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