「じゃあ、まずは大好きな乳首をいじってあげる」
「す、好きじゃないし……あっ!」

 勇人を仰向けに寝かせて、薫がその上から覆いかぶさった。普段はパソコンのキーボードを叩いている、細く長い指が勇人の乳首をつまむ。先端面だけを指先でくるくるとゆっくり撫でる。親指と中指でつまんで、強く引っ張る。

「ん、んんっ、やだって……あ、ああっ!」

 右手の人差し指から小指の先を揃えて、指先に乳首が触れる程度の距離で小指から人差し指へとスライドされたり、乳首をスイッチのように押し込まれる。

「あっ、あ、あ! あ、だめっ、だめ!」

 指で乳首の先端をぴんっ、ぴんっと何度も弾かれる。小刻みにくすぐられる。かと思えば、乱暴につままれる。

「あっ、あああああっ、や、やだぁ……あ、ああ……!」

 乳首をいじられていくうちに、頬を膨らませていた勇人の顔がとろけ、唾液が口からこぼれ、頬に赤みがさす。乳首をいじりながら、薫はそれを写真に撮っていた。かしゃ、かしゃとスマホのシャッター音が鳴るたびに勇人が身をよじらせる。

「乳首嫌なのに、おちんちんギンギンになっちゃうの?」
「だ、だって、だって変な触り方するからぁ……ああん!」

 薫は勇人の首元に口づけて、そのまま耳元に顔を近づけて囁く。つん、つん、ぐり、ぐり、と乳首を触りながらパジャマのボトムの上から勇人の性器を触る。大きく膨らんで、今にもはちきれそうだった。それを見ているだけで薫もまたたまらない。
 かしゃ、とシャッターボタンをタップする。普段はツンとしている勇人の、困ったみたいな顔で乳首をいじられている姿が、スマホの端末に保存される。

「可愛いから、いろいろこすってあげようかな」

 薫は借りたスウェットと下着をくつろげて、性器を出した。女性的ななよやかで可愛らしい顔には似つかわしくない大きさだった。勃起して、先走りの汁を垂らして、血管が浮き出ている太い肉の棒。
 明るい室内、眩しい照明。薫の下で寝転がりながら、勇人は改めてそれをまじまじと見る。ごく、と唾を飲みこんだ。最初の性行為を思い出したからだ。可愛い顔の女性のような人に、メチャクチャに抱かれて女の子みたいにイキ続けた事。
 顔がどんどん赤くなっていく。それを薫はまた写真に収めて、乳首に性器をこすりつけた。

「あっ、な、何でそんな所……ん、んんんん!」
「おちんちんで乳首いじられて気持ちいいんだ?」

 ぱんぱんに張って、てかてかと光っている亀頭。我慢汁を涙のようにこぼす先端のくぼみを乳首に押し付けてキスをする。尿道にちょうどフィットする大きさの乳首。まるでジグソーパズルのピースがそろったよう。
 くちゅ、くちゅ、と性器で乳首をこすられるたびに、勇人のカラダに電流のように快楽が走る。

「あ、あっ、あっ、あっ! や、やだ、乳首にちんちんの匂いがついちゃうって!」
「もっとエッチな乳首になっちゃうね」

 ずり、ずり、と強くこすりつけられる。勇人は薫を見上げた。逞しい性器に似合わぬ優美な顔。その表情に浮かぶものは愉悦と快感。なぜかそれを見ていたら頬が赤くなっていく。
 乳首をこすられるたびに、会陰が疼く。蟻のとわたり。女性だったら性器がある場所が、挿入をねだるようにひくつく。お尻の奥、人差し指を一本入れて腹側に曲げたところにある胡桃の形の性感帯も一緒に震える。

「脇にも匂いつけようか……ここ、えっちな形してる」
「え、えっちなかたち……? あ、あ、あああああ!?」

 乳首から脇へと薫の性器が移動する。先走りの汁が蛞蝓(なめくじ)の這ったような跡を残して光る。左脇に挟むようにしてこすられる。それはまるで素股のようだった。

「あ、ぬるぬるするっ、くすぐったい!」
「くすぐったいっていうことは気持ちよくなれるポイントでもあるんだよ。脇を性器代わりにごしごしされて、恥ずかしいね……」

 意地悪な笑みを浮かべながら薫がくす、と笑った。本当に勇人は恥ずかしい。普段そんなに意識して使う部位ではない所で性器をしごかれている。先走りの汁を、性器の匂いをたっぷりとこすりつけられている。とろとろの汁を塗りつけられて、ぐちゃぐちゃにされている。そう考えるとたまらなかった。

「あ、あ、あ……や、やだっ、乳首も脇も、ちんちんでコスコスするの、ダメ……」
「……そんな誘うような事言ったら、止まらなくなっちゃうよ」

 スマホで写真を撮った。右脇に性器をはさんで、真っ赤な顔をした勇人が写っている。モードを切り替えて、動画も撮ってみた。性器を脇でしごくたびに、あんあんと喘ぐ勇人。薫はぞくぞくとした。

「次はお口をイジッてあげるね……」
「あ、あふ、おくち……? んむ!」

 薫の長い指が、唇をなぞって勇人の口の中につっこまれた。歯茎を、歯列をなぞって、頬の裏の柔らかい所を触られる。舌を絡めると、ざらざらとした指の感触。こすりつけるようにして指が粘膜に触れる。口の中に指を入れるのと同時に左乳首を強くつままれる。

「お口のナカも気持ちがいい所なんだよ。乳首をスイッチにして、口の中も、舌も、喉の所も性感帯だってプログラミングしてあげよう」

 そうだった、システムエンジニアだった。勇人は忘れかけていた薫の職業を思い出した。顧客のニーズに合わせてプログラムやソフトウェアの仕様書を作る仕事。
 すべての動物は一定のプログラムによって動いている。常に高い所を目指して上るテントウムシ、巣を作る時のクモのような遺伝子に刻まれたアルゴリズム。いわゆる本能というものだ。
 人間にはそれとは別に学習によって後天的に身につくプログラムがある。身体や脳に何度も教えることで……学習して覚えていく機序。勉強、運動、生活習慣……気持ち良さ。
 ぐちゅぐちゅと指で粘膜をいじられる。指を舐めしゃぶり、夢中で追いかける。ふと、薫の指が口の中から出ていく。舌で追いかけて、突き出すようにして垂らした。

「は、はっ、は、ふぇ……?」
「可愛いからたまらなくなっちゃった。ねえ、喉使っていい?」
「のど……? んんんんん!」

 性器が勇人の唇とキスをして、口の中に強引にねじこまれる。優しく穏やかな人柄と顔立ちに似合わない、荒っぽさ。そのギャップに勇人の胸が高鳴る。可愛い顔して……こんなことするのか。そう思った。
 生ぬるくて少ししょっぱい性器が勇人の口の中に入り込み……薫が両手で葡萄酒色の髪の毛を、形の良い勇人の頭をつかむ。

「ん゛、んんんん! ん゛ふっ、ん゛ぁ!」
「苦しいよね? でもね、喉も立派な性感帯なんだよ」

 苦しい。口の中いっぱいに薫の性器の味が広がり、匂いが脳髄を犯す。頭の中が性器でいっぱいになる。
 ちんぽ、ちんぽっ、ちんぽ、と勇人ははしたなくも男性器名を脳内で連呼して、されるがままに頭を揺さぶられる。

「あ、喉がぬるぬるになってきたね。がんばれ、がんばれ」

 勇人の喉の粘膜が、異物を排除しようとして粘液を出す。それによって滑りがよくなってきてより深くまで性器が入り込む……勇人の意識がかすむ。息ができない。まるで口の中だけではなく脳まで突っ込まれているようだった。
 薫は可愛らしく、煽るように応援をしながら写真を何枚か撮った。一生懸命、薫の局部に顔を埋めて性器にむしゃぶりつく勇人が写る。
 ひどい扱い。それなのに勇人の性器はギンギンにそそりたって、だらだらと先走りの汁を漏らしてグレーのパジャマのボトムの色を濃く暗灰色に変えていく。もちろん、そこもしっかり写真に撮られている。
 そのシャッター音にすら、どうしようもなく興奮する。無理矢理口を使われているのに気持ちがいい。勇人のピンク色に染まる脳内に、卑猥な言葉が並ぶ。
 おれ、おれ、喉をオナホ代わりにされて突っ込まれて、ちんちんギンギンになっちゃってるうぅうう!
 
「ん、んんんんんん! んぐ、んぉ……」
「喉セックス気持ちがいいね……本当はたっぷりお口にナカ出ししてあげたいけど、どうせなら下のお口でイキたいな」

 薫が少しだけ考え込んでから、にっこりと微笑んでわがままを言った。性器を抜かれた途端、せき込む勇人。

「げほっ、げほ、げほ、ぐぇ…………このっ、ヘンタイ……!」
「ふふ。乳首弄られて雑イラマされて、おちんちんギンギンにしてるのに? どっちが変態なのかな〜?」

 先ほどまで吸っていたメンソールの煙草のような爽やかな微笑みだった。さすがに温厚な勇人もいらだちを覚える。咳をしながら掴みかかろうとするが、するりとかわされてスマホを見せられる。

「ねぇねぇ、見て。いっぱい撮れたよ」
「はぁ!? ……うっ、何だこれ!」

 写真のアプリを見せられる。そこには目を覆うくらいたくさんの勇人の写真があった。指で二、三回スクロールして、ようやく違う写真が出てきた。今日撮られたもの。そのどれもにいやらしい顔をしている勇人が写っている。


「でも、もっと撮りたいし……ここも楽にしてあげたい……ね、勇人?」


 首元に顔を近づけられて囁かれるように名前を呼ばれた。それだけでぞくぞくと背筋が震える。血が沸騰するようだった。血液が、すごい速さで心臓に向かって駆ける。




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