江戸の侍にろくな奴はいない(1/4)




 
 
 
今日もあたしは裏庭の掃き掃除。



今日も掃いても掃いてもキレイになりません。逆に荒れてます。ちょっとこの竹箒オカシイんじゃねェの?





―――ガタンッ、





『んー?』



厠から大きな音がした。その音がしたのは、以前自分がこっちの世界に来た個室からだった。



まさか、



しばらくここで過ごしているが、この裏庭の厠を使う奴はゼロに等しい。そんな厠から、大きめの音が聞こえたのだ。それはつまり、



『え、うそマジで?』



あたしは、あまりの衝撃で竹箒を落としてしまった。



『え、どんだけ。え、どんだけデケェの出したの?そんなガタンとかいう程ビッグサイズの出しちゃったの?どんだけ溜めてたの?お尻は大丈夫なの?たたた大変だ!!新野さあああん!!お尻の急患がああああっ!!』



あたしは、きっと恥ずかしがり屋だからこの裏庭の厠を使って特大のうんぴちゃんを発射した忍たまのお尻を救うべく、音がした個室へ走り出した。





ガチャッ!!!!
















バタンッ!!!!





あたしは、厠のドアを思いっ切り閉めた。



『詰まってた』



いやいや、ありえないありえない。でも詰まってた。いやいやいやいや、ありえないありえないってば。



あたしは、もう一度確認の為に厠のドアを開けた。



『…………』



詰まってた。人が。



『え、何このカオス』



厠を開けると、よく見知った奴らが詰まってました。









* * *








 
先日、天女様の世界からやって来たという男四人。彼らは天女様と知り合いらしい。



一人は一目瞭然で天女様の兄弟だ。髪の毛の色、あの死んだ魚のような目、雰囲気も全く同じだ。



二人目はやたら髪の毛がサラサラしている男だ。声も似ているのだが、何考えてるか分からない感じが綾部に似ている。



三人目は、一言で言うと危険な男だ。全てを見透かすような目や、あのわざと出している殺気。一番の要注意人物と言えるだろう。



そして四人目が、



「アッハッハッハッ!おんしゃ面白いの〜。土井全助先生はええ先生ぜよ!」

「……全助じゃなくて半助です」



この頭おかしゲフン、変わった理解力を持つ坂本辰馬。



事の始まりは全てあの馬鹿天女ゲフン、おつむが崩壊している天女様のせいだ。












『あ、土井ちゃん!良いところに……っ!』



それは、突如なすり付けられた。



『ほら辰っちゃん、この人この人。先生だから、この人こんなんだけど先生だから、ちょっとバカっぽいけど先生だから。宇宙とか船とか知り尽くしちゃってるから』

「…………」



貴女にだけは「馬鹿」と言われたくない。



「おお、ほんまかえ!銀千代の友人にもマシなヤツがおるんじゃの〜!」

『おいコラ、辰馬てめェどういう意味だゴルァ』



どういう意味もこういう意味もない、馬鹿って事だよこの馬鹿天女。おっとゲフンゲフン。



こうして坂本さんをなすり付けられた私は、現在進行中で後悔している。



あの天女様の知り合いに、まともな人がいる筈がなかった。何故気付かなかったんだと、少し前の自分を殴りたい。



「あの坂本さん、」

「辰馬でかまんぜよ全助!」

「半助です」

「アッハッハッハッ!そうじゃったそうじゃった、全助!」

「半助です」




こいつも全く人の話聞いてないっ!!ちょっとこの人、あの天女様より厄介かもしれない。



「なんか疲れちょるの〜、銀千代はアホじゃから相手するの大変じゃろ?」

「はは、」


 
あんたも十分大変ですよ。何人事みたいに言ってんですか坂本さん。あんたも十分アホですよ。



「銀千代はアホじゃけんどわしらの妹みたいなもんじゃきの〜。アホはアホでも根は良いヤツじゃき、仲良うしちゃってや」

「……はい」



そう言った坂本さんの目は、優しい目をしていた。



「さて、ゆっくり茶でも飲みながら話すぜよ、全助!」

「半助です」

「アッハッハッハッ!すまんすまん、全助!」

「半助です」



だが、それとこれとは話が別だ。あの天女様、とんでもない人なすり付けたな。頼むからこの人どうにかしてくれ。というか誰か代わってくれ。



 







back

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -