追いつ追われつ(1/2)




 
 
 
『はあ、はあ……げほっ!』



私は今、追われている。



私が一目散に逃げ出した為、一緒にいた忍たまともはぐれてしまった。



まあ、それはいっか。



しかし、どうしよう。



この場所では明らかに私が不利だ。走るスピードや体力を考えると、捕まってしまうのは時間の問題だろう。



どうしよう、このままじゃ逃げ切れない。



いっそのこと、このままここに隠れていた方がいいのかもしれない。



いや、駄目だ。



もし見つかった時、どう逃げる?



今隠れている場所は、入る所も出る所も一カ所しかない。見つからなければ良いが、見つかれば逃げ場がない。どうしよう。



困った、どうしよう……








「っ……天女様っ!!」

『!?』



ビクリと肩を揺らし、恐る恐る声の主を見上げた。そこには、先ほどはぐれたボサボサ頭の忍たまがいた。



「良かった……っ、無事だったんだな!」

『え、あ、どうして、』



どうして追って来たの?だって私は、ぶっちゃけこの忍たまを囮にして逃げたのに。



「天女様が逃げ切れたか心配で……、はぁぁぁ、良かったァ」



彼はその場しゃがみ込んで、ボサボサの頭をわしゃわしゃっと掻いた。



心配、してくれたのか。囮にしたのに。こいつ、良い奴だ。囮にしたけど。



「これからは俺といろよ、いざとなったら俺が抱えて逃げる」



真剣な顔で私を見つめている。こいつ、……良い奴だ。次も囮にしようって考えてすみません。



『あ、ありが』

「そこまでだ」



『!!』
「!!」



ボサボサ頭の彼が、私を庇うように声のした方に振り向いた。


「ど、土井先生!」

「竹谷に天女様。無事で何よりだが、ここは移動した方がいい」

「まっ、まさか、」



私は、無意識にボサボサ頭の彼の服をキュッと握り締めていた。



「……天女様、大丈夫だから」



ボサボサ頭の彼は、私を安心させようと優しく微笑み、ポンと頭に手を乗せた。



ちょっと馴れ馴れしいんじゃないかと思ったけど、今はそれどころじゃないから仕方ない。


 
「さあ早く」

「はい!」



忍者の先生に促され、ボサボサ頭の彼に手を引かれて走り出した。



「…………見つけた」



『ひいぃぃっ!!』
「うわっ!」
「ぐえっ!」



走り出た瞬間、ヤツに見つかった。



そして、一番後ろを走っていた私は腕を掴まれてしまった。こうなったら道連れだと、ボサボサ頭の彼の手を離すまいとガッチリ握った。いきなりブレーキをかけられた彼は、転びまいと前を走っていた忍者の先生の腰紐を無意識に掴んだ。一方で忍者の先生は勢い良く走り出した瞬間だったため、その衝撃で腰紐が腹にめり込んだ。



「さぁ、来てもらおうかな?」



私達の顔が、ひくりと引きつった。



「時間はたっぷりあるんだよ?汚髪トリオさん?」



『…………』
「…………」
「…………」



こうして、私達の逃走は失敗した。この、忍者のくせに金髪の彼によって。



 







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