正しい天女の過ごし方(1/8)
「天女様おはよう!」
「おはようございます天女様」
どデカい声で挨拶してきたのは、何度か見たボサボサ頭の人。もう一人のサラサラ黒髪忍者は、反対に落ち着いている。
『……おはよう、ございます』
何だこの温度差。
あのボサボサ頭の忍者、なんで朝っぱらからこんなにテンション高いの?おかしいんじゃねェのかコイツ。
「天女様!今日の担当は俺たちだから!あっ俺、竹谷八左ヱ門!こっちは良太郎って、あれ、そういえば自己紹介してたな!はははっ!」
「八左ヱ門、落ち着きなよ」
『………』
この竹谷って人、なんか一人で楽しそうだ。そして、このタイプ苦手だ。だって存在がプラスじゃん?私はマイナスじゃん?プラスとマイナスでプラマイゼロじゃん?あれ、だんだん思考がおかしいぞ?そうだ、私今寝起きだ。
「天女様!早く飯に行こうぜ!あっ先に井戸か?それにしても天女様の頭ボサボサだな!俺たちお揃いだ!はははっ!」
「八左ヱ門、落ち着きなって」
『………』
ボサボサ頭のお前にボサボサって言われたくないわ。何なんだ一体!髪の毛の手入れなんてしていないけど、お前のボッサボサの髪の毛よりマシだよ!一緒にすんな!
『あの、井戸へ……』
「わかりました。ご案内しますね」
「よし!じゃあさっそく井戸行こう!ほら天女様こっちこっち!」
竹谷にぐいっと手を引かれるが、卑弥子の寝起きの体はそれについていけなかった。
―――ずべしゃ!!
竹谷が手を掴んだままの状態で、顔面から床に滑り込んだ。
痛い!チクショウ!顔痛い!足が絡まったチクショウ!竹谷って奴は踏ん張りやがった!チクショウ!道連れに出来なかったチクショウ!忍者めぇぇええっ!
「大丈夫か天女様?天女様はドジだなぁ!はははっ!あっそうだ、俺がおぶろうか?なんなら肩車でもしようか!」
「八左ヱ門、ちょっと落ち着いて」
おんぶも肩車もしねぇよ。ちょっとお前黙れよマジで。
* * *
それにしても、この竹谷さんのプラスのオーラ凄いな。プラス過ぎて霊が寄って来ない。
今日は数珠付けてるから大丈夫だけど、この竹谷って奴ちょっと便利だ。蚊取り線香的な意味で。
苦手なタイプだけど、いざという時は近くにいよう。霊共に連れて逝かれるくらいなら、この人といる方がマシだ。
「そうだ天女様!今度飼育小屋へ案内するよ!改めて、こん太や毒之丞たちを紹介するからさ!」
『……はあ、そうなんですね』
でも面倒臭そうだ。絶対このタイプ面倒臭い。っていうかテンション高過ぎて色々空回ってる。もはやコレ放置しか出来ないじゃん。ただのうるさいBGMじゃねぇかコイツ。あと何でそんなに楽しそうなの?もう片方が哀れんでるの気付かないの?
「今日の朝餉何だろなー。やっぱ肉食いたいな!肉!けど魚も食いたい!両方食いたい!やべぇ腹減った!!」
「八左ヱ門、落ち着け」
何なんだコイツら。
今日一日、この温度差テンションに付きまとわれるのか。
ある意味霊よりタチ悪いなこれ。
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