「ねぇ、名前ちゃん、」
にこにこしながら五年の天使雷蔵が私に話しかけてきた。
「いつも仲良くしてくれて、ありがとう。」
少しはにかみながらそう言ってくるので、何かやってしまったのだろうかと問うと、
「違うもん。ちょっと言いたくなっただけだもん。」
ぷいっと少しご機嫌を損ねて走っていってしまった。
「あ、名前さん!」
今度はボサボサ頭の八左ヱ門が手を降りながらこちらにやってきた。
「いつもありがとうございます!これ、ほんの気持ちですが、」
そう言って彼が差し出したのは淡い桃色をした花の束。
「さっき、裏山に散歩行ったら見つけて…ほら、」
すっと彼の手が私の髪を撫でたかと思うと、
「やっぱり似合う。」
えへへと嬉しそうに笑う八左ヱ門と、花飾りの私。
「あー!いたっ!もうどこいってたのぉ?」
バタバタと勘右衛門が走りよってきた。
「もう、今日は勘ちゃんとお団子食べに行く約束してたでしょ!」
あぁ、そんな約束もしてたなぁ……。と目の前で早く早くと引っ張る男を見る。
「早くいかないとなくなっちゃうんだから!」
なくなってしまうとはそんなに有名で美味しいものなんだろうか。
「お願い団子だもん!願い事が叶うかもしれないじゃん。」
どうやら願い事が叶うと曰く付きのお団子らしい。それが食べたいとはなんと可愛いことか。
「名前ちゃんがいつか俺のこと見てくれます様にってお願いするんだ!」
にこっと笑いかけるこの男は確信犯である。
「名前、豆腐ができたのだ。」
どうだ!と自信満々に言ってくる残念系美少年兵助。
「今回のは自信作だ!何故ならにがりの量を減らし〜」
長々と豆腐に対していろいろ言っているこの美少年は、ここがなかったらモテただろうに。
「何を考えているのだ?え?豆腐への情熱を無くせばモテただろう?」
きょとんとしたその顔に、俺から豆腐を取るな!とか言われるのかと思えば、
「名前がいるならそれでいいのだ。」
そう言ってまた豆腐への情熱を熱く語る美少年ずるい。
「やあ、何してんだ?」
話しかけられたので振り替えると、そこにはとても意地の悪そうな私がいた。
「ちえっ、もう驚かないのか。」
つまらなさそうに私の変装を解き、いつもの友人の姿になった。
「名前って私と雷蔵の区別がついて……なんで分かるんだ?」
なぜと言われても五年の天使雷蔵がそんな意地の悪そうな笑みを浮かべるはずがない。
「意地が悪いって?そりゃそうだろ。」
にやっと笑う雷蔵の顔をした三郎の、
「好きな人をイジメタイ年頃だからな。」
本当の 顔を見たような気がした。