「おい酢昆布娘、てめェまた俺の買いだめチョコレート食っただろ」
「言いがかりは止めるアル。この澄んだ瞳を見るヨロシ」
反論する神楽の鼻からは、鼻血がタラタラと垂れている。
しかも両方の穴から。
「神楽ちゃんも懲りないけど、銀さんも懲りてないね」
『あの人の将来は糖尿で決定だね』
「言えてる」
今日は新八が万事屋にお泊まりする日で、夕食の食器を名前と共に片付けていた。
『今日は新八君が手伝ってくれてるから、後片付けがすっごくスムーズ!』
「役に立てて良かったよ」
いつもは一人の後片付けを、新八が洗い物をして、洗い終わった食器を名前が片付ける役割分担で行っていた。
『ふふっ、こうしてると銀さんたちが子どもで私たちが夫婦みたいだね』
「………えっ!」
『………えっ?』
食器を直して振り向くと同時に、新八も振り返っていた顔を元に戻す。
髪に隠れているが、ほんの少し耳が赤く見える。
(私…変な事言っちゃった?)
新八の顔を覗こうと近付いたが、床に散った水に滑ってしまった。
『きゃっ…!!』
「へ?…わっ!!」
ドサッ……………
名前が新八に突っ込み、抱きつくように倒れ込んだ。
洗い物をしていた新八の手は濡れていたので、さり気なく名前に当たらないようにしてくれている。
『ご…ごめ………』
“ごめんなさい”と言う前に、名前の肩が一瞬だけひんやりと濡れた。
『え?』
「名前ちゃん大丈夫?」
倒れた体を起こし、床に座って新八と話す名前。
今はもう体は離れているが、倒れていた時の一瞬だけ抱き締められた気がした。
名前は新八の濡れた手で抱き締められた時の感覚を思い出し、みるみる顔が赤くなる。
『…っ!!』
名前は乱暴に新八の眼鏡を奪い取り、背中を向けて自分に装着する。
「わ、眼鏡っ!ちょっと名前ちゃん!」
『うううるさいっ!私の肩濡らしたから没収!』
「えっ、あ、ごめっ」
レンズ越しでぼやける視線の中、背後で顔を真っ赤にして慌てている新八を横目に両手で眼鏡を押さえ俯いた。
メガネ貸して
視力が悪いと都合が良い
(アンタが赤くなっても
私の赤い顔は絶対見せない!)
視力が悪いと都合が良い
(アンタが赤くなっても
私の赤い顔は絶対見せない!)