昼が過ぎ、夕方になってもみんなは帰ってこなかった。
予備として船にあった二本の刀を弄びながら、俺は甲板の船縁に座っていた。


随分時間がかかっているようだが、この島はそれだけ広いのだろうか。
いや、それなら日が落ちる前に一旦帰還し、後日改めて捜索に向かうはずだ。

……となると、帰って来れない事態になっていると考えるべきだろう。



「探しに行くにも行けねーし、どうすっかねぇ……」



身の振り方を考えていたその時、林からカイル達が姿を現した。
遠目からでも、疲弊している様子がわかる。やはり戦闘を行ってきたのだろうか。



ん?レックスとアティが……いない?


歩いているのは、カイル、ソノラ、スカーレル、ヤードのみだ。
全員が戦闘後のような格好をしているだけに、不安は募る。


俺は甲板から地面まで飛び降り、みんなを出迎える。


「よう、おかえり。何だか大変だったみたいだな、その様子だと」


近くで見ると、服が汚れていたり、血が滲んでいたりしているのがわかる。



「ただいまっ、ユキ〜!」
「おかえりソノラ、いきなり抱きつこうとすんのは駄目だぞ」


俺の姿を見るなり、満面の笑みで俺に抱きつこうと(飛びかかろうと?)するソノラ。
それを軽く受け流して頭を掴み、近付けないようにする。

ジタバタ暴れるソノラを無視し、カイル達に状況を尋ねる。



「なあ、レックスとアティの姿が見えねーけど……」
「あぁ、センセ達なら大丈夫よ。事情を説明するから、一旦船長室に行きましょ?」
「子供達はどうしていますか?」
「色々手伝ってもらって疲れたのか、少し前に遅めの昼寝に入ったぜ」
「そうか。まあ急ぎの話じゃねえし、アイツらには先生達が来てからでもいいか」



取り敢えずあの二人が無事だと聞いて、幾分か安心した。
何をしているやら気にはなるが、カイル達が焦った様子を見せない所を見るに、少なくとも危険なことではないのだろう。


事情は船長室でというスカーレルの言葉を受け、俺達は場所を移すことにした。





船長室に向かう途中で治療道具一式を持って行き、みんなの傷の手当てをしながら、この島の事情について説明を受ける。



「はぐれ者達の島……か」
「護人、って言う四人が、それぞれの集落を取りまとめているってわけ。それで……」
「うおぉ!?ユキ、スゲぇ染みたぞ今!!」
「話の腰を折るな、カイル。大の男が消毒くらいでガタガタ言うんじゃねー」
「じゃあもっと優しくやってくれ。愛が足りねえな、愛が」


スカーレルが説明している最中、俺から治療を受けていたカイルが騒ぎ出した。
ぞんざいな返事をすると、何やら寂しそうに面倒臭いことを言い始める始末。

うーん、これは地味にウゼぇ。



「愛、ねぇ。……カイル、あまり騒ぐと傷に障るから、めーだよ?はい、痛いの痛いの飛んで行け〜」
「こっ、こいつは……ユキ、ヤバい!その笑顔はヤバい、お前に惚れちまいそうだ!!」
「そりゃー良かったな。ほらよっ、一丁上がりぃ!」
「いってぇぇぇえ!?」



非常に柔らかい笑顔を作り、カイルの頭を撫でてやる。
すると、カイルがまた別方向に面倒臭いことを叫び始めた。

いい加減付き合いきれないので、最後の包帯を巻いた後、その箇所を思い切り叩いてやった。カイルはやかましく叫び、悶絶している。


使い終えた道具を片付けながら、中断した話の続きを促す。



「一方的に話し合いが終わっちゃったんだけどさ、先生達、納得できないって言って、護人達の後を追ってったんだよね」
「まあ、彼らに希望をつなぐ以外に、船を直す方法が無いのも事実ですが」
「成る程ね……それじゃ、あの二人が帰ってくるまで夕飯でも作って待ってるか」



二人が帰って来るのを待つことになり、この場は解散となった。

思い思いに休憩に移ったカイル達と別れ、俺は夕飯の支度のために厨房へと向かった。



しかしまあ、はぐれ召喚獣が多いと思ったら、召喚術の実験場だった場所とは。

遭難した俺が無事に流れ着き、かつカイル達の船が流されて漂着した所から考えるに、ここは帝国領からそう遠くない場所にあるのだろう。
となると、かつてここを管理していたのは帝国軍なのだろうか?それ以外の可能性では、それだけの力を持った召喚術師達の組織か。


まあ、それはどうでもいいのかもしれない。
ここが放棄された場所だというのなら、そいつらが再び介入してくることも無いだろうし。今から重要になってくるのは、誰がここを作ったかと言うことよりも、ここに取り残された奴らがどんな考えを持っているかということだろう。


護人とやらが危害を加えてくる気がなかったってことは、少なくとも、敵対関係にはならないと思うけど。




刻んだ野菜を鍋に放り込みながら、そんなことを考えていると……。



「ユキー!」
「只今帰りました!」



レックスとアティが、いつものようなほんわかとした笑みを浮かべながら、林から姿を現した。


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