まずは事情聴取をし、その結果によっては身柄を拘束……と言うのがセオリーだろう。
カインとアシュヴィンがいる以上、仮に襲撃されたとしても心配は無用。そうなった場合、身柄を拘束する正当な理由が生まれるため、むしろその展開の方が望ましいかもしれないか。


自分なりに今後の展開について考察していると、櫓で見張りをしていた団員が私の所へ走り寄ってきた。
カインが向かった場所とは別にヤマの兵士が現れたのか、とも思ったが、何やら団員の様子がおかしい。

余程急いで来たのか、相当息が上がっている。
それだけではない。漂わせている緊張感と焦燥感は尋常ではなく、額には冷や汗とも脂汗ともつかない汗が浮かんでいる。


「た、大変ですフィアス団長!」
「どうしました?」
「魔物です!魔物が……魔物の大群が現れました!!」



言葉に詰まりそうになりながらも、必死で報告する団員。その狼狽ぶりは、尋常ではない。


「兎に角、一度櫓へ!」
「……わかりました」



団員に言われるまま、私は櫓へ向かう。
警戒に当たっている団員達に特に指示は出さない。報告された内容の趣旨が今一不明なので、現状を維持して貰う。


それにしても、魔物の大群ですか……。


私は櫓へ向かって走りながら考える。
報告に来た団員の狼狽ぶりから察するに、魔物は相当な数なのだろう。だが、魔物の種類と数さえ告げれば事足りることではないのだろうか?

突然の事態に慌てたというのもあるかもしれないが、我々の練度から考えると、どこか腑に落ちない。
それに、ヤマの兵士が現れたタイミングと上手く重なるとは、幾ら何でも運が悪い──と言うより、出来過ぎな感じがする。


櫓の前に辿り着いた所で思考を一端控え、梯子を駆け上る。
そこで目に入った光景は、私の想像など及ばず──文字通り、想像を絶するものだった。



黄昏時の名残を残し、僅かに紫がかった夜の闇。今はまだ弱々しくも月の光が助け、視界はそれ程悪くはない。
延々と続く森の先、荒野が広がっている筈の場所は、怪しく蠢く無数の魔物に埋め尽くされていた。

その数たるや、数千はいるであろう圧倒的な数。鳥の群れが羽ばたいているような影も確認出来るが、それも恐らくは魔物。
多種多様な魔物が大群となり、この砦へ向かってきているのだ。


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