こちらの続き。)


ヨリを戻してから初めて名前と喧嘩して、本音でぶつかり合ってオレもキツい言葉で怒鳴っちゃって名前は泣いて…でも同棲しようと言ったらすげぇ安心した顔をして喜んでくれた。いや、喜ばせるために敢えてそう提案したとかじゃねーんだけど。普通にオレも、名前ともっと一緒にいたかったしもう寂しい思いさせたくなかったし。

「ごめんなー名前…」

ヤったあとそのまま眠ってしまった名前の寝顔を見ながらオレの口から出た言葉はやっぱり「ごめん」だった。もう「ごめん」は嫌だと言われたけど、マジこれしか言えねぇんだって。

こうやって名前の寝顔をゆっくり見るのいつぶりだっけ。ヨリ戻した日は名前が寝た後もずーっと寝顔見て勝手にキスして抱きしめて体弄ったよなぁって思い出す。だってコイツの寝顔子どもみてぇに可愛いんだって。眉毛下がってさ、口ちょっと開いてさ、すげぇ可愛いんだって。マジで食っちまいたくなるぐらい。

「そういや腹減ったな…」

オレが作ると言ったのに、仕事の電話が入って結局名前が作ってくれた昼飯。喧嘩しちゃったから半分も食えてなかった。名前を起こさないようにそっとベッドから出て服を着て、リビングに戻ると冷え切った料理がそのままテーブルに残されていた。とりあえずラップしておいて晩飯にでも回そう。

それから…、と次何しようか考えた時ふと閃いた。財布と携帯だけポケット上着のポケットに入れて、急いで家を出た。






「隆くん…」
「おー、起きたか」
「ごめん…寝ちゃってた」
「いーよ気にすんな。いっぱい泣かせて疲れちゃったよな」

名前は泣き腫らした赤い目をしていた。なんだかそれを見ると本当に申し訳なくなって心が痛くなる。名前をもう悲しませないって誓ってまた付き合うことになったのに、マジで何やってんだオレ。

「名前…?」
「起きたら隆くんいないから…愛想つかれて置いていかれたかと思った…」
「なに言ってんだよ…」

キッチンに立つオレの背中に後ろから抱きついてきた細い腕。絶対に絶対に生涯守ろうと決めたんだ。オレからもういなくなるわけねぇだろ。それは要らねえ心配だよ、名前。

「ねぇ、何してるの?」
「あ、これ?紅茶入れてんの」
「いい匂い…しかもティーバッグじゃなくてちゃんと茶葉じゃん!」
「そう、ちょっとネット見ながら美味しい紅茶の淹れ方見ながらやっててさ」
「え?なんで?」
「ケーキ買ってきたから、どうせなら美味い紅茶もと思って」

そう言うと名前は「ケーキ!?」と目を輝かせてオレの背中から離れて冷蔵庫を開けた。そのすげぇ勢いに思わず笑ってしまう。まるで昔のルナとマナみてぇだ。

「もしかして私が寝てる間に買ってきたの?」
「そうそう。最近ケーキとか食ってねぇなーと思って。あと名前も喜ぶかなって」
「うん…嬉しい…」
「よっしゃ、紅茶もいい具合だし3時のおやつにしよーぜ」

名前の顔がぱあっと明るくなったのを見て、ケーキ買いに走ってマジで良かったと思った。こんなんで元気になってくれるなら毎日でも買いにいくわ。いや、それは太るからって嫌がられるかな。

「…なんでケーキ三つ?」
「二つだと名前がどっちも美味しそうで選べなーい!とか言いそうだから」
「いや、たしかに言うかもだけど…え、私が二個食べるの?」
「食いてぇだろ?」
「…太る」
「いーじゃん今日は特別。仲直り記念にさ」

定番のショートケーキと、チョコのムースと、フルーツのタルト。他のケーキもどれも名前が好きそうで選ぶのに苦労した。でもどれを食べても喜びそうな名前の顔を思い浮かべて頬を緩ませながら買って来た。

「隆くん…ありがとう」
「どういたしまして」

マグカップに紅茶を注ぐオレの腕に抱き着きながらお礼を伝えてくる名前が可愛かった。いつもは向かい合ってローテーブルに座るけど、今は二人で隣り合わせに座った。名前がショートケーキとタルトを選んで美味しいと言いながら頬張っていた。そんで更にオレのチョコムースを恨めしそうに見ている。ほんと、名前に限らずだけど女って甘いもんに目がない。

「チョコムース食いたい?」
「うん」
「はい、あーん」
「えっ!照れる!」
「なんでだよ、ほら口開けろや」
「あ、あーん……あ、濃厚で美味しい、です」

なんで今更こんくらいで照れるのか分かんねえ。恋人としてやれることは全部やり尽くしているのに。でも名前はこうやって今更照れたりするところがあるから飽きない。うん、ひたすら可愛い。昔から、ずっと。

「名前もう一口食う?」
「もういい」
「なんでだよ食えよ!ほらあーーん」
「え!?もういいってば」
「なんでだよ、つまんねぇな」
「えぇ…?あ、じゃあ隆くんこっち食べない?ほらあーんしてあげる」

名前がショートケーキを一口分フォークに刺してオレの口元に持ってきた。…確かに、あーんとか言われる側に立つと結構恥ずかしいもんがあるな。別に誰が見てるってわけじゃねぇけど。

「隆くん?」

名前が少し首を傾げて名前を呼んでくる仕草が堪らなかった。恥ずかしさなんて一瞬で吹き飛んで、オレが口を開けると名前がケーキを食べさせてくれた。甘いホイップクリームの味が、口の中にじわりと広がる。

「どう?美味しいー?…って、ぅわっ!なに?」

どうしようもなく名前に抱きつきたくなった。その反動で名前の体は後ろに倒れてしまったが、まぁクッションで頭は守られたからヨシ。

「名前…」
「なに?隆くん」

力一杯抱きしめた。きっと名前は苦しいだろうに、苦しいだなんて一言も言わず、オレの背中にそっと腕を回してくれた。

「…大好きだよ」
「うん、私も」



食べちゃいたいぐらい大好きだよ




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