澄み透る | ナノ


「この間楽しかったなー!久々に名前とも会えたし!一馬も会うの久々だったんだろ?」
「ん?まぁ」
「俺らとのメシなんて気にしないで名前と二人で会えば良かったのに」
「…名前は!俺がサッカー及びチームのことを最優先に考えていることを理解してくれてる超いい奴なの!」

はぁ?なにムキになってんだ一馬…。俺そんな変なこと言ったかぁ?



「一馬のあのすぐムキになるとこ治らないかね」
「英士」
「あんなんじゃ名前もそのうち愛想つくよ」
「…なぁ英士。あいつらなんで最近あんま会ってねぇの?今って一時期より忙しくねぇじゃん俺ら」


英士はストレッチしながらうーーーんと唸った。俺は高1のとき名前と知り合ったけど英士はガキのときからの知り合いだっていうし。もしかしたら一馬より英士の方が名前について詳しいんじゃないかと時々思う。でもそんなこと言ったら一馬はまたきっと怒るだろうし、言えないけど。


「忙しかった時期にちゃんと会えてないからちょっとすれ違ってるんじゃない?」
「そんだけぇ?」
「いや、俺だって憶測でしかないけど。でも名前が寂しがってるのは絶対だろうけどね」
「やっぱり!?それは俺もこの間感じた。名前もともと元気200パーセント!みたいな奴じゃないけど、なんかいつもより萎れてたもんなー」
「心配?」
「そりゃあな!だって一馬の彼女だし、英士の幼馴染だし、俺の友達でもあるんだから!」

力強く言うと英士は少し吹き出した。…おいおいなんでそこで笑うんだよ。俺は本気で言ってんだぞ。


「結人が心配してくれるなら名前もきっとすぐ元気になるよ」


そんな簡単なことなら誰も悩まないだろ。重い腰を起こしながらウォームアップに入る。

高1の夏頃だっけ、一馬がいきなり名前のこと紹介してほしいって英士に言ったのは。進学する高校が決まったとき、英士は一馬に「その高校は名前も行くところだよ偶然だな」なんて言ってて。そのときは一馬もふーーん程度で終わったんだが、中学最後の都選抜の試合を見にきてくれていた名前を見てから、意識し出したとか。それで高校でも見かけるようになってから気になり、でもなかなか英士に紹介してほしいと言えず(あいつほんとにへタレだから)、それで夏休みにようやく言い出せたんだっけか。

それで自分だけ紹介されるのはなんかおかしいだろ!って言って俺も一緒に行かされたんだっけ。まぁおかげで名前と友達になれたからいーんだけど。

友達になったはいいけどやっぱり一馬は告るのにもそりゃーもう時間がかかってた。二人が結ばれたのは高1の終わり頃。半年以上かけて、ようやく自分の思いを伝えられたわけだ。そのときは俺も自分のことのように嬉しかったなぁ。英士は幼馴染が親友と付き合うって微妙だ。なんて言ってたけど結局は仲いいもん同士がくっついて嬉しそうだった。


「あれ…あいつらって付き合ってもう…」


ん?いまちょうど一年くらいなんじゃ…。


そうか。もう一馬と名前が一年も…。一年……



「お、おい一馬!!」
「いてっ、なんだよ」
「お前ら付き合っていまちょうど一年くらいなんじゃねーの?記念日いつ?」
「明後日だけど」
「お、良かったちゃんと覚えてんだな。で、当日はどこ行くんだ?」
「明後日試合じゃん。だからどこも」
「お前…!それはないだろ!名前はなんて言ってんだよ」
「別に…試合頑張ってねって」


そんなお前…それはちょっと…。名前の性格上、無理してでも会いたいとか言うとは思えない。そして一馬がわざわざ他の日程を用意しているとも思えない。英士の言うとおり、名前は絶対寂しがってるだろこれは。なんでお前らそんな風になっちゃったんだ?昔はそんな冷めていなかったのに。









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