俺は、神殿の中で目を覚ました
海底の神殿それが俺の産まれた場所だった
この世界は青と蒼、それに広がる大地しかなくて
それに人間がほんの少しいるだけだった
父の名はアルカ、とても美しい海の神だった
「オルカ・・・、こちらへいらっしゃい」
「お父様!」
「この世にはな、6つの力がある」
「6つ・・・?」
父は黒板に一つ一つ言葉を書いていく
「絶望、忠誠、苦しみ、後悔、無限、そして結末」
「どうしてそんな悲しい言葉なの?」
「それはね、オルカ、私も彼女も結局は・・・、
何かを恨まないと強くなれないからだよ」
「それは僕も?」
「さあな、人は変わる、良くも悪くも、私に色んな音色を聞かせる
愛で彼女が狂ったなら、愛で人を正す人もいるだろう・・・、
オルカ、お前はお前の正義を貫きなさい、その正義が時に人を
苦しめる時もあるだろうが・・・、だがお前が信じ貫く先に・・・、」
オルカは口を閉ざし首を横に振る
俺が首をかしげるとまた口を開いた
「オルカには、無限の力を授けよう海は無限だ
この世界に海、私がいる限り、オルカは無限になるのだ」
「お父様・・・?」
アルカは俺に力を与えた、アルカが言うにはこの世界で
一番最初に産まれた神子が俺だという
そのすぐ後にアルカはアルテミシアに人間を連れて宣戦布告した
人間への人権そしてこの世界に住まう権利をかけての戦いだった
「お父様・・・、僕を置いて、いかないで・・・、」
「アルカ、私はお前を置いては行かない、今のお前には兄弟達がいる
この世界の人達はお前を愛してくれるだろう、泣くことはない
この世界を愛しなさい私を・・・、信じなさい・・・、」
俺の背中に刻まれた無限の印がある限り俺は神子なんだ
父の導きの通りに深海を抜け地上へと上がり
父の恩恵が一番強かったイヴァラータへと向かった
そのイヴァラータに来たときには荒れ狂う国に嘆いた
神子の事を伏せ旅人としてそこで見たのは人体実験や奴隷制度
幼い子供は惨い人体実験に使われ兵器となり果てる
「この世界は、お父様が、人間の為に、戦って平和になったのに
人間はさらに自らの欲望の為に・・・、同じ人間を殺すというのか・・・、」
震える拳で壁を殴った
俺は、お父様から綺麗な世界を教えてもらった
現実は、惨く・・・・、汚い・・・、
過ぎていく時間の中で、子供は産まれても親が貧困で育てきれず
孤児院へと子供を送る・・・、
そして孤児院は密かにその子供達を使い人体実験を行う
「酷す・・・、ぎ・・・、る・・・、」
子供達の悲鳴、断末魔が満ちる中
この国に一人の姫が産まれた・・・・、名前はセシリーアと名付けられ
国民は姫の誕生に、誰もが喜んだ
俺はただ、観るだけしかできなかった
心の底でたまる人間への憎悪は子供一人産まれた事では消えなかった
今までに100人の子供が殺されてきたこの国で・・・・、
俺は憎んだ、観ていることしかできない自分と
子供一人助けてやれない自分と
この世界では汚らしい人間と同じ自分を・・・・、
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「大丈夫?」
「ひっ・・・・、」
魔術の配合を間違え魔法陣に飲み込まれた瞬間別の場所へ飛ばされた
辺りを見渡すと、イヴァラータではなく別の世界のようだった
こんな世界、見た事もないし初めてだ、走る鉄の塊
歩く人の恰好を全て知らない・・・、ただ目の前に泣いている少女だけ
俺の事が見えていた・・・、
「貴方は・・・・、?だれ・・・?」
「ぼく・・・・、いや、俺は・・・、オルカ」
「オル、カ・・・?貴方も、幽霊なの・・・・?」
「幽霊?違うなぁ、俺は死んでないし、この通り君に触れれるでしょ?」
少女の頭をなでると少女は泣き止んだのか呼吸を
落ち着かせるために深呼吸をした
「君の名前は?」
「私は、花恵・・・、貴方も、私にしか見えない人なの・・・?」
「うーん、そうみたい、どうして泣いてたの?」
「皆、私の事化け物っていうの、誰にも見えない人が見えるから」
少女の瞳に今の自分が重なった気がした
「そっか・・・、君が化け物なら・・・、俺らは・・・、なんだろうネ・・・、」
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