ゆらりゆら体を揺さぶられ目を開ける
タカネが今にも泣きそうな表情でこちらを覗いていた


「うーっ・・・、花恵・・・、」
「タ、カネ、あれ、私、影に飲み込まれてそれで
シュヴァリエ様が・・・、いや、ノスタージャ様・・・、
ううん、違う、セシリアは?!」

「うー、何の夢を見ていたのかは知らないけど
ここはイヴァラータ軍の本部だうー、今、ミカエ達が
討伐に再び街へ降りたところだうー・・・!」

「し、篠は?!」

「俺ならここだよ」と篠の声がする方へ顔を向けると
顔にガーゼを貼った篠さんが眉を下げて笑った
パッと見たところ、大けがはしていないが擦り傷程度の
怪我をしているのか所々絆創膏やガーゼが見えた


「し、篠、怪我している、の?」
「俺は大丈夫、これでも軍学校に入ってたから」

「でもっ・・・、」
「花恵が闇に飲まれたって聞いて、タカネが無理やり引き抜いて
くれたらしいけど」


タカネの右腕は黒づんでおり、赤色の魔術が浮かび上がる
セシリアの影と同じオーラを感じる、これは呪いだ
タカネは「なんでもないうー・・・、三日もすれば治るうー・・・、」
と目をそらした、私は何もできない・・・、あの時のように・・・、
見ているだけしかできないのか・・・?


「私、」


篠の腕を触った瞬間ほんわりと光る、その瞬間篠が「あれ?」と
首をかしげるが、何かに気づいたのか目を見開いて「花恵!」と叫んだ


「いつ、回復魔術を?」
「え?私・・・?」


篠は袖を捲るり腕を見せた、確かに擦り傷など全てが無くなっている
私、いつの間に・・・、と自分の手を見るが特に何もない
ドアが開く音がして皆がそちらを見る、シュヴァリエ様とサイさん
そしてその後ろにいる月子さんが部屋へ入ってきた


「魔物は消えた、民への被害は最小限に抑えられたのは
サイの早い判断と月子がたまたま市民街にいたからだ」

「サイさん・・・!」
「ヒスイ、なんてツラしてんの?魔力消費しすぎじゃない?」


ニヤニヤしながらサイさんがヒスイさんの額に手を当てると
赤色の光がホワリと浮かびまた消える
魔力の共有、サイさんとヒスイさんは上司と部下でありながら
契約をしているからか魔力の共有ができるらしい


「花恵」
「月子さん・・・、」
「何、私の顔何かおかしい所でもある?」


あの時の、セシリアの思い出にいた月子さんとは全く印象が違う
あの頃の月子さんは本当に軍人らしい人で笑いもせず
ただ黙々と戦闘を行う人だった、それでも今の月子さんよりも
昔の月子さんの方が人間らしく感じるのは
セシリアが、いたから・・・?


「シュヴァリエ、私は明日の朝には神殿に向かうわ」
「成る程、確かに女神の封印が緩まっているのは事実
緩めた人物がいるがいるとは思うのだが、そしてこの国に
魔物を放った人物がな・・・、」

「神殿、ですか?」

「ああ、女神の魔術を封印した結晶がある神殿ダヨ」


篠さんが全て教えてくれた、ノスタージャ様とアルテミシアの
戦いの後、ノスタージャ様はすべての力を使いアルテミシアを
封印することに成功したがその力は弱く、後に援軍をつれた
メルクリース国王ラヘル・メルクリースとメルクリース国の
神父達により神殿を立てそこに結晶と分厚い封印を乗せたという
その神殿はイヴァラータ中心街から馬で2時間程の所にあるという


「篠さん、私、私も行きたいんです!」
「うーん、神殿は神聖な場所だし、イヴァラータ国よりは
魔物が出る確率ははるかに下がるけど・・・、」

「いいではないか、花恵よ、」
「は、はい!」


急にシュヴァリエ様に名前を呼ばれ飛び上がる
シュヴァリエ様はふふっと笑うと「そう硬くならなくてもよい」
と言うがあの時のシュヴァリエ様を知ってしまってからは
中々シュヴァリエ様の顔も見れない


「月子について行くと良い、こう見えて月子は誰かの護衛を
するのは完璧な男だ、それに篠のいう事も一理ある
神殿ならば危険性は少ないだろう、今のイヴァラータ国は
私の力を低下しているのか魔物が入りやすい状況だ」



月子さんは「邪魔はしないと誓うなら連れてってあげるわ」
と言うとシュヴァリエ様から銀色の鍵を渡される
「それは?」と私が聞くと月子さんは目を細めて「私の鍵」と呟いた




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