ノスタージャとシュヴァリエ様は無数の禁術を開放し
巨人兵を止めていくが巨人兵から流れる血は
巨人兵が今まで殺してきた人間の死体、その血に
触れればシュヴァリエ様ですらも皮膚が焼け爛れる


「シュヴァリエ・・・!貴方!」
「もう一度煉獄を開放だ」
「シュヴァリエ・・・!」


シュヴァリエ様の顔や腕などの皮膚にヒビが入り
炎がこぼれ出ていた、魔力が底をつきかけている
これ以上の魔力の消費はシュヴァリエ様の命が危ない


「シュヴァリエ!よしなさい、貴方にはセシリアが託した
この国と民がいるのよ?!」
「それは貴方様も同じ事でしょう、しかしここで私が逃げれば
この国どころか世界が危機にさらされてしまう」



巨大な槍、グングニルの槍が魔法陣から召喚される
シュヴァリエ様が崩れ落ちると同時にグングニルは
巨人兵を次々と貫いていく

「出でよ!ウェヌルの民よ!」

ノスタージャの魔法で呼ばれた黒色の巨大な騎士は
グングニルを手にするとそれをもう一度飛ばし巨人兵を殺していく


「最強の盾を貴方に授けましょう」


白い光が集まったと思うと金色の盾となり騎士はそれを手にすると
街へと流れる巨人兵の血をせき止める


「くっ・・・、魔力が・・・、私ももう限界のようね・・・、
アルテミシアの封印は無理でもせめてこの巨人兵だけは・・・!」


ノスタージャ様の言葉を聞いた瞬間にシャンっと鈴のような音が響いた
どこから聞こえてい来るのかとあたりを見渡すがどこからでもない
私の胸から聞こえているような気がして胸に手を当てると
鈴の音と鼓動が重なっている気がした


「な、に、これ・・・、」

「花恵・・・、」
「セシリア・・・?!」


セシリアの声は聞こえているのに姿はどこにもない
どこにいるの?セシリア!と胸の中で叫ぶとセシリアは「ふふっ」と笑った


「祈りなさい、強く祈りなさい、強く祈ればそれは真実となるわ」


祈る・・・、強く・・・、お願い、あの二人を助けて、この国を、世界を
女神の重い通りにさせない・・・!誰か、助けて!
魔力が流れていく感覚がする、胸に淡い光が灯る・・・、


「ええ、その祈り、ちゃんと届いたわ」


長い黒髪が宙に舞う、アルテミシアが「何故、黄泉に還したはず!」と叫ぶ
女王のセシリアは桃色の瞳を細め「我が愛しい子が呼んでいるのに
こない母なんているかしら?」と笑うと無数の魔術を開放する
これがセシリアの魔法・・・、

桃色の魔法陣が数百と開く、とてつもない魔力が消費されているのに
セシリアは余裕の表情ですべての魔法を発動させる
その魔法は全ての消えかけている命の灯を消えないように守り始めた


「セシリア?!」
「ノスタージャ!助けに来たわ!」
「貴方、何故!」


セシリアはシュヴァリエ様の髪をするりと撫でる
シュヴァリエ様の体はゆっくりと炎に変わっていき
それを見届けるとノスタージャの前に立つ


「ノスタージャ、ありがとう、この国を守ってくれて・・・、」
「何言ってるの、親友の国を守らず自分の国だけ守るなんて
そんなのできるわけ無いじゃない」


ノスタージャとセシリアが手を合わせると光の柱が爆発音と共に昇り
その瞬間に光の柱は倒れ時計回りに回り巨人兵をなぎ倒していった
巨人兵は消えたのを見てアルテミシアは詰まらなさそうな表情で
霧となり消えた


ノスタージャの皮膚はヒビだらけで左手は既に消えかけている
そんな姿を眉間にしわを寄せセシリアは見ていると
どこからか聞こえるか弱い鳴き声にノスタージャは慌てて周りを見る
巨人の血の中から母親の死体に抱かれた赤子が弱弱しく泣いているのが見えた
ノスタージャ様は慌ててその血の池に入っていく
皮膚が焼ける音と悪臭、それに痛みに耐えながらノスタージャは赤子を抱く
赤子は幸いにも怪我はなかったがかなり弱り切っていた


「か、かわいそうに、こんなに弱って、大丈夫よ、私のかわいい娘
もう怖い魔物はいなくなったわ・・・、」


ノスタージャはもう亡骸となっている母親を見て「よく頑張ったわね
子供は、助かったわよ」と言って血の池からでたと同時に地面が激しく揺れる
ノスタージャは気にすることなく、魔術を子供に吹き込み続ける


「私のすべてをこの子に授けましょう、美貌も知恵も富も魔力も全て
この愛しい我が子に・・・、」


魔術を赤子にかけ終わると、水色の霧がほんわりと集まり始めた
それがアルテミシアだと誰もが気づいた
今の二人ではアルテミシアには勝てない、誰もが分かることだった
魔力が尽きかけているノスタージャと戦闘ができないセシリア
そして二人の間には弱り切った赤子がいる・・・、



「逃げなさいセシリア!早く!遠い所へ!」
「でも!ノスタージャ・・・!貴方は!」
「私はここで時間を稼ぐわ!」
「嫌よ!ノスタージャ!貴方も一緒に!」

「お願いよセシリア、この子の為にも貴方は生きて・・・!」

「ノスタージャ・・・、」
「早く!」


セシリアに赤子を授けるとノスタージャは魔術を紡ぎ始める
セシリアは涙を流しながら「ノスタージャ・・・、」とつぶやき
走り始めた、これ以上尊い命を失いたくない
それは女王である、セシリアとノスタージャの切なる願いだった
シュヴァリエ様は炎となり跡形もなく消えていったが
一定の時間がたてば魔力が戻り元の姿に戻るだろう
残されたのはノスタージャのみだった


「あらぁ、いいのかしらぁ?ノスタージャ・・・、貴方一人で」
「貴方なんか私一人で十分、さあアルテミシア、貴方はもう寝る時間よ」





セシリアは赤子を抱いて走っていた、セシリアの両足は黒い
影はまとわり始めておりそれがあの時の呪いだと気づく
無数の民を無くした、呪いはどんどん強くなっていく


「せめてこの子だけでも・・・、」


救える命は、救いたい!


この子を争いのない、愛にあふれた、本当の平和な世界へ
今セシリアができるのはそれのみだと・・・、


「大丈夫よ、貴方が寂しくないように私の力をわけてあげる」




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「本当に花恵は泣き虫さんねぇ」
「ああ、だがお人形さんみたいに綺麗になるぞ」



お父さんのお母さんが幸せそうに見ている揺り籠の中には
私がいる・・・、赤子のころに私・・・、

そうか、そういう事だったのか・・・、


私は、現実世界ではなくて、ヒストリアの住人で・・・、
私は二人に守られた小さな命だったのだ・・・、




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