「ここは危ない、花恵様、タカネ様、避難しましょう!」
「うーうー・・・、血の臭いが強くなってきてる人が
襲われている・・・?という事は花恵や私が目当てじゃない?」

「魔物はメイドや軍人、貴族まで襲っています
王が不在の間はこの城は砂の城、早くここから脱出して
軍の本部へ逃げましょう!」

「軍の本部?」


タカネの手を引いて走る、ヒスイさんは次々と
日本刀で魔物を切りつけ時に雷がバチバチと鳴ると
遠くの魔物を落雷で叩き潰した
これが戦闘特化の魔術・・・、恐ろしい威力だった


「はい、城の隣にある大きな屋敷がイヴァラータ軍の本部です
そちらにはまだガウェンがいます、魔力が尽きる前に避難しましょう」

「ガウェンがいるなら本部は安心ね」


ガウェンはシュヴァリエ様が直接魔力を注いで作り上げた魔獣
シュヴァリエ様の魔力には<王国の盾>という能力があり
国民を害する物を強制的に排除するという効果があるらしい
つまりガウェンは小さいがシュヴァリエ様と同じぐらいの
魔術を使える、今のガウェンはシュバリエ様の分身という事なのだ


「ガウェンはシュヴァリエ様の分身です、ガウェンがいる
本部に逃げ込めばガウェンが守ってくれます」


城の中庭に出ると黒い影が地面から伸びていく
無数の触手のような影はヒスイさんの日本刀に巻き付く


「くっ!落ちろ!雷(いかずち)」


大きい雷の音は聞こえ、それと同時に触手に光が落ちる
かなり大きい魔術だ、ヒスイさんはさっきから魔術を
使っている事もあり魔力は低下してきている
これ以上の魔術はヒスイさんの精神を削る・・・、かなり危ない


「ヒスイさん!それ以上は!」
「いえ、僕は、花恵様とタカネ様を無事本部まで送るのが
使命ですので・・・!ここで引くわけにはいきません!」

「本当に、ヒスイはどこまでもイヴァラータの軍人には
勿体ない人間だうー・・・、」


赤色の光がタカネを包んでいく「タカネ?!」と声をあげて
しまうが光はタカネを包み込むとすうっと消えてしまう
幼い少女の姿はそこにはなく美しい白髪の女性が立っていた
それは私でもわかったこれが本当のタカネの姿なんだと


「人の子、下がりなさい」


赤色の魔法陣から大きな白竜が現れる、白竜は吠えると
触手に食らいつき触手を引きちぎる
そして炎をまき散らし無数の触手を次々と薙ぎ払っていく
影はすうっと消え残ったのはヒスイさんとタカネ
白竜は赤い光となって散っていくと空へと昇って行った


「タカネ様!魔力を使っては!」
「うー、いいんだうー、今は安全を優先するべき、それに
もう本部まで向かわなくていいみたいだうー」

「あ、あれは・・・、ガウェン・・・!」


炎の獣が空をかけ走りこちらに向かってきていた
ガウェンは中庭までかけ走り地面に降りると
こちらをじっと見ている


「ガウェン、シュヴァリエは今どこにいるの?」
「シュヴァリエ様は今こちらに向かっていますが魔術師が
現れ足を止められております」


ガウェンの炎は人型へと変わっていきシュヴァリエ様へと
変わっていった、これがシュヴァリエ様の分身・・・、
声も姿もすべてシュヴァリエ様と一緒だ・・・、


「まだ街は襲撃されておりませんが、大聖堂は半壊しております」
「ただちに軍を街へ・・・!」
「サイ様が軍を引き連れ街へと向かいました、ついでに大聖堂にも
寄られるそうなので、国王は大丈夫でしょう」

「サイさんが・・・、」


ガウェンは赤色の目を細めると「花恵様!」と私を呼ぶ


「は、はい」
「貴方様の・・・、後ろの影は何でしょうか・・・?」
「え?」


振り返ると真っ黒の影のような手がこちらを掴もうとしていた
悲鳴を上げようとするが手のほうが早く飲み込まれる


「花恵!」


タカネの声が遠くで聞こえる
それと同時に誰かの泣き声も聞こえた




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