タカネは「本当に何も知らない少女だうー・・・、」と牙を見せて笑う
幼い少女がするような笑い方ではない
もっと狂気的で竜にある威圧感で満ちた笑い方は私の心を
全て見抜こうとする・・・、
掌に汗がにじむとそれを隠すように手を握る
篠はそんな私に気づいたのか篠の大きな手が私の手を包み込み
「大丈夫だよ」と小さい声でつぶやいた


「神の子とは私やミカエ、セシリーア女王など神に力を
与えられた人の子を意味する、私は父なる神アルカから
ミカエはノスタージャ=アフィリポアから、そして女王は
母なる神アルテミシアから・・・、」

「神の恩恵を・・・?」
「そうだ、神に選ばれし人の子は神子となり
永遠の力と命を手に入れる・・・、そして花恵もだ」
「私が・・・?」

「魔力の匂いと音から、セシリーア女王からかなりの
恩恵を貰っている・・・、うー・・・、だからアルテミシアと
同じ匂いで同じ音なの・・・、ウー・・・、」


タカネは私を睨むとまた「うー・・・、」と小さい声で言う
タカネが言うのは私の中に流れる魔力という物が
セシリアと同じ色だという事、そしてセシリアは元々
女神の恩恵を受けて神子になっているので私も女神の
恩恵を自然と受けているらしい


「私が、セシリアと一緒・・・、」
「そうだ、まあそれは体の中に流れている気流みたいな物で
外に表すのはまた別の問題だ、例えば私は主に炎の魔術を使う」


シュヴァリエ様が人差し指で魔法陣を切ると炎が急に燃え上がり
獣がうなる声に炎がライオンのような獣へと変わる
パチパチとなる鬣はフワフワの毛のような暖炉の炎のような見た目で
触りたくなりながらも火傷をしそうで怖い


「触っても怪我はせぬよ、彼の名はガウェン、私の召使みたいな物だ
私は主に炎の魔術だが、私の中に流れる父なる神アルカは水の神でな
魔力を表に出し魔法を使うには己のやり方で自由に出せる」

「うー、誰がどの力を分け与えて貰っているのか嗅ぎ分けやすい
セシリアの力を引き継いでいるという事は少なくとも彼女なら
太陽を出せるかもしれないという事」
「同盟国としてこれは伝えるべきだと思ってな」


ミカエ様はそういうとタカネの頭をくしゃくしゃと撫でる
タカネは「うーうー」と言って目を細め喜んだ
私が隠された太陽を出せるかもしれない・・・、そうすれば
この国に再び栄光が・・・、


「まあそう急がなくてもよい、私の力がすぐに切れるわけでもない
花恵は花恵のペースでこの世界に馴染んでいけばいいのだ」

「ああ、私もそう思う、私とタカネはしばらくイヴァラータに
滞在する、何かあれば頼るがいい」
「うー、ミカエは忙しいなの、邪魔はしちゃ駄目なの!」


話し合いが終わり、篠と一緒に部屋を出るとアイリンが立っていた


「お話しは終わりましたか?」
「ああ、しばらくあの二人はいるそうだよ」
「わかりました、ではメイドを二人程お付けいたします
花恵様?顔色があまり・・・、」


アイリンは私の額に手を当てると「熱はないようですが・・・、」と言う
アイリンに大丈夫だと一言言い、篠を見る
篠は首を傾げ「どうした?」と言った風に私を見た


「篠、私、もしかしてだけど・・・、」
「うん、その話は俺が聞くべきだね、花恵は一人で抱え込みすぎてる」






アイリンが淹れるハーブティーの匂いと甘いクッキーの匂い
冬だがテラスは魔法で暖かく自然と気持ちは落ち着いていく


「私がテラスで倒れたとき、セシリアに会ったの」
「女王に・・・?」
「そう・・・、セシリアは本体が無いって言ってた
だからセシリアはこの国に戻れないのかもしれない・・・、」


「本体・・・?」


あの時のセシリアは寂しそうな瞳をしていただから手を伸ばした
セシリアの本体がありそうな所・・・、考えても思いつかない
自然とハーブティーが効いてきたのか眠気がくる


「花恵?大丈夫?」
「うん・・・、大丈夫・・・、少し眠たいみたい・・・、」


視界がゆっくり暗くなっていく・・・、だるさがどんどん強くなる
どこかで私の名前を優しく呼ぶ女性の声が聞こえた・・・、
セシリアではない、優しい女性の声・・・、



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