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「寒かったら言ってね」
「大丈夫です、でもこんなに着込んで・・・、そんなに寒いんですか?」
「うーん?まあ寒い国としても有名だからねえ、今の時期はそんなに
だけど冬になるとマイナスとか平気で行くよ?」
「そんなに寒い国なんですね・・・、」


馬に乗ってかなり時間がたった、塔に近づけば近づくほど大きく見える
顔に当たる風は冷たくなっていって大きな門が見えた頃には
身体的にも精神的にも疲れてきた頃だった


「急で悪いんだけど、イヴァラータ軍にオルカ・アルヴィアカが
来たって電話してくれないかな?」
「いえ、それは不要でございますオルカ様、すでに
シュヴァリエ様から門を開けるよう連絡が来ております
ささ、こちらへどうぞ・・・、」

「もう知ってるって事ね・・・、」


門をくぐると塔の中は一つの大きな町となっていた、馬を門番に渡すと
ゴンドラに乗り込む、イヴァラータは水の都とも言われており
何処か向こうの世界のヴェネチアを連想させる・・・、
ただ塔の中は想像よりもはるかに広くイヴァラータはその中の国で
他にも村や小さな町がいくつかあるという


「ゴンドラで20分ぐらいかな」
「結構遠いんですね」
「まあね、そんなもんだよ、寒くない?大丈夫?」
「いえ、着込んでいるので大丈夫です」

ゴンドラで広場らしき所まで行くと馬車が止まっておりサイさんが
手を振っていた


「やあ!こんなに早くに会えるなんて嬉しいヨ!ささ!乗って!」
「こんにちはサイさん・・・、」
「やあ花恵ちゃん、ドウダイ始めてのイヴァラータは」
「想像と違って寒い国でびっくりしました」
「そうだろそうだろ?でも春の一周だけは暖かいんだ、春夏秋冬って
あるみたいだけどウチの国は冬冬冬春ってカンジ?アフィリポア王国は
春夏秋冬あるみたいだけどネ!同じ塔なのに仕組みはまったくバラバラ!」


そこが面白い所の一つなんだけど!とサイさんの話を聞いていると
あっと言うまに城らしきばしょに到着しサイさんの案内についていく
城は歴史を感じられる物で正式には城塞といった形だった
高い壁の中には木々があり緑の中で軍人や貴族などが話していたり
メイド達が一つ一つ窓ガラスを拭いていたりと想像より賑やかだった


「王様ってどういう方なんですか?」
「シュヴァリエ?シュヴァリエはねー、面白い事が好きなおじさんかな?
皆怖い人みたいに言うけど、そんな事ナイナイ、むしろメチャ優しいてきな?」


ケラケラ笑うサイさんに目を細めて見ているとサイさんが立ち止まり
大きな木製の扉をノックする、奥から「入れ」という男性の声に
肩を震わせるも篠に肩をポンと叩かれドアを開けて入る

豪華なソファーに座る白い軍服の男性
黄金のような金髪に赤色の目、月乃さんとはまた違った美しい人
月子さんが人形のような繊細な美しさならこの人は誰も手の
届かない大きな宝石、絶対的な美にして強いオーラ


「冷えているだろう座るといい」
「は、はい」


篠の隣に座ると甘い香りの紅茶が運ばれてくる
男性がシュヴァリエ様なのは誰も言わなくても分かる
篠はお母さん似なのだろうか、髪色も瞳の色もぜんぜん違う


「遠い所からよく来てくれた、私は、シュヴァリエ、この国の王をしている
王といっても代理だ、私は神の恩恵を受けていないただの男なのでな」
「春川 花恵・・・です・・・、」
「そう硬くならなくていい、異界からの人間と言うだけでも歓迎だが
ノスタージャ様の娘となるとこちらも変わる・・・、」

「どうしてその事・・・、」
「花恵は戦争に関係ないよ、彼女はこの世界を知るために
この国に来た、そしてすぐに下界に帰るよ」
「そうか・・・、この世界を知るために・・・、」


シュヴァリエ様はくっと笑うとサイを見る
サイは「ちぇー」と言って部屋から出て行くとシュヴァリエ様は私を
見て「本当に良く似ている」と呟いた


「この国にいる間は私の客として手厚くもてなそう、篠、お前もだ
久々のイヴァラータだ、ゆっくりしていくといい」
「俺はこんなとこ・・・、すぐに帰りたいけど・・・、」
「あ、ありがとうございます」

「なあにそう拗ねるな・・・、花恵、この国にすぐに来たという事は
それなりの覚悟ができてきたという事か?」

「覚悟・・・、かはわかりません、がセシリアが愛した国なら
とても素晴らしい国だと思います、まだ詳しくは知りませんが・・・、
この世界を知るきっかけとしてこの国をまず知ろうかと・・・、」
「ふむ第一のこの国に来た事は光栄に思う、そして思う存分
この国の事を知るといい、私は面白い事が大好きだ、それに花恵も
悪いようにはならぬと思うぞ」


私が首をかしげると「そういう所はノスタージャ様にそっくりだ」と笑う
月乃さんにも言われた、そんなに似ているのだろうか
私は母を知らないからとても不思議に思う


「ルーナに会ったのだろう」
「知ってるんですか?」
「ヤツから連絡があったからな、今は放し飼いをしているが
セシリーア女王が戻られた時にはもう一度首輪を付け直さねばならん
私には忠誠が誓えないとヤツは言いよった、セシリーア女王の捜索は
ルーナにまかせっきりだが、私は進展があってよかったと思うぞ」

「セシリアの捜索・・・?」
「処刑の日から彼女は消えた、とはいえ、花恵は会ったことがあるようだが
私は処刑の日から会っていない、彼女は彼女なりに考えがあっての行動
だろう・・・、しかし次が成功するとも限らないがな」



『そうねえ、花恵が良い子にしてたら・・・、私が連れてってあげるわ
全てが終わった後・・・、花恵にもあの素敵な世界を見せてあげたい』

セシリアが言った言葉を忘れたことはない、だけどセシリアが
連れてってあげると言ったのは初めてだった
いい子にしてたらいつかセシリアが愛した世界に来れると
あんな辛い思いをしない本当に素敵な世界に来れると・・・、
セシリアと二人で毎日楽しい生活が送れるのだと・・・、
私は夢を見てた、セシリアの事を何も知らないでずっとずっと
この世界でセシリアが何をしてきたのか、私は知らないで

セシリアのあの温かい心にすがりついていた

もしこの世界をセシリアが望んだ美しい楽園でいられるのなら
私の望みは一つ、その楽園を失わないようにする・・・、


「私の考えと花恵の考えは反対のようだな、だが私は力を貸そう」




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