鶏の泣き声に驚いて飛び起きる、窓の外は明るい
階段を降りるとコーヒーを飲みながら寛いでる篠の姿が見えた

「おはようございます」
「あ、花恵おはよう、今日は花恵の必要品を買いに行こうかと思うんだ」
「必要品・・・、でも私、お金ない・・・、」
「大丈夫、俺実はけっこー金持ちなんだ」

そういうとコートを羽織り篠がニカッと笑う
見た目すごく若い青年が金を沢山持っているようには見えない
篠は何故こんなにも私に良くしてくれるのかわからない
もしかしたらもっと篠は色んなことを知っていて
私に隠し事をしているのかもしれない・・・、
でも、彼から今まで受けてきた闇は感じられないそれどころか
海のようにキラキラしていてとても綺麗なのだ


「まずは服かなあ、あ、おばちゃん!丁度いい所に!」
「やあ!篠!おや、なんだい彼女か?見せ付けてくれるねえ!」
「違うよ、ちょっと色々あってね、この子に似合う服を数着頂戴」
「いいよ!さあ、こちらへおいで!まあ別嬪さんだね、まるで
ノスタージャ様のようだよ!それならこんなドレスなんかいいんじゃない!」


おばさんの言葉にドキドキしながら服を着替えていく
ワンピースを五着程買って店を出る、おばさんから飴を貰ってしまった
篠について靴屋に入る、靴屋では歩きやすい靴を買ってもらった
篠は行く店行く店みんなと仲がとても良い、通りすがりの野良猫にもだ


「篠は皆と仲がいいのね」
「うん、当たり前だよ、皆優しいからね」
「私のいた世界じゃありえない話だ・・・、」
「そりゃあね、君の世界は心が無い人が多い・・・、俺も驚いたよ」
「それは私も・・・?」
「さあね、この世界で生まれた花恵は違うと俺は信じてるよ」


パン屋でパンを買って果物屋さんで果物ジュースを飲む
公園で演奏を聴いて本屋さんで篠の本を買う
充実した休日とはここまで楽しいとは思わなかった
篠さんにもらってばっかで悪いというと「俺の金じゃないから」と
篠さんが笑った


「花恵、ちょっと俺の影に隠れてて」
「え、あ、うん」


コートのフードをかぶされ顔を下に向ける、篠の前に立つ二人の男は
黒色の軍服のようなものを着ており腰にはサーベルがあった
という事は警察か、軍人・・・、


「まだ下界でウロウロしてるの、早く天界に帰ったら?」
「篠様か、貴方様こそ早くイヴァラータへ帰るべきです
シュヴァリエ様が心配しておられますぞ」
「まったくだよ、篠、シュヴァリエは心配してないけど
いつまでも子供みたいに駄々こねてないで、分かるデショ?
シュヴァリエも国民からの支持と言うものがあるんだから」
「俺はシュヴァリエがどうなろうが関係ないから」


そういって篠は歩き出す、それについていこうとするも
腕を引っ張られ反動でフードが脱げる


「俺、楽しい事を探す嗅覚、バケモノ並みだからサァ・・・、」
「え・・・、」
「君、誰?」


篠が慌てて男の肩を押すも、男の手は離れない、とても痛い
慌てて篠さんのコートを握る
男はニヤリと笑って「へぇ・・・、」と言う、フードに隠れてて
顔は見えなかったがしっかりと男二人の顔が今は見れる

片方は茶髪にサングラスをかけており私の腕をキリキリと掴んでいる
もう片方は金髪の青年だ、サングラスが上司だろうそれに嫌な感じがする


「君は、ノスタージャ様にそっくりダネ、何者かなぁ?」
「サイ・・・、その子を離せ!」


どこから現れたのか篠は日本刀を抜くと男に切りかかる
手は離れ、男は刃を避ける


「駄目ダヨ、篠ちゃん、下界の町では刃物を振り回すのは禁止
されてるんだから、俺ら、シュヴァリエの息子を捕まえて
豚箱に入れるのは嫌だから、しまってヨ」

「篠様、そうです、かなり珍しい事で僕も驚いていますが
今回はサイさんのいう事が正しい、僕らは下界の民に手を出さない
その約束で下界で調査できている、イヴァラータ人である篠様が
刀を振り回している所を下界の役人にでも見られれば篠様も僕らも
一たまりもありません・・・、」

「チッ・・・、」
「篠・・・、」
「ごめんね、こいつらはイヴァラータ軍の軍人」


サングラスの奥にうすら見える瞳が私を見て笑う
あまりいい気分ではない、むしろこの人は嫌いだ
私の嫌いな闇を沢山持っている・・・、金髪の青年はそれとは反対に
正義感がかなり強いまなざしをしているようだが・・・、


「やあ、俺はサイ、イヴァラータ軍第一部隊隊長をしているヨ!」
「同じくイヴァラータ軍第一部隊隊員のヒスイ・ウェーイです
先ほどは上司のサイが失礼を・・・、」
「い、いえ・・・、私は・・・、春川 花恵・・・、です」
「花恵ちゃんね、下界は良い所ダヨ、でも天界はもっと良い所だ
良かったらウチの国にもおいでヨ、イヴァラータ国王も君なら大歓迎だ」

「もういいだろ、話は」
「篠様、ですから刀は・・・、」


篠が刀を魔法陣の中に放り投げると私の腕を掴む
ずっと優しかった篠の表情は険しくサイさんとヒスイさんを睨んでいる
二人と何があったのかは知らないが話の流れから、篠さんが
イヴァラータと深く関わっているのは分かった


「じゃあ、クソ親父に言っといて、セシリーア女王の二の次に
ならないように頑張れって」
「篠、それは俺らにとって、最高のほめ言葉ダヨ」

サイさんはニヤニヤ笑って「こわいねー顔」と篠さんの頬を突っついた



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