少し汗ばみながら緩やかな坂道を歩いていく。
雲一つない真っ青な空。
ところどころに草花が散る象牙色の道。
その両端にひろがる向日葵の黄色と緑。
向日葵は海の青を隠して穏やかな夏の終わり風に揺らいでいる。
手前を、歌うような軽やかさで歩くフレイの髪をも揺らす。
キラはフレイの頭へと腕をのばす。
風に飛ばされないように白いリボンのついた麦わら帽子を軽く手で押さえた。
リボンについている小さな貝殻が鳴らす玻璃の音(ね)が指先で踊る。
少しだけ振り向いて微笑むので、首を傾げてキラも笑った。
「どうかしたの、フレイ?」
「なんでもなーい」
まろやかな白い肩を小さく跳ねさせて答える。
サンドレスのベイビーブルーが涼やかにひるがえり、キラの足をくすぐってからかう。
「――――ねぇ、手、つないでいい?」
「どーしたの?」
「なにが?」
「いつもは、勝手にしてくるのに」
「そうだったかな?」
フレイはベリーピンクの唇を軽く尖らせる。
「やーだ。あついんだもん」
そんなことを言いながらも、麦藁帽子を押さえていたキラの手に、自分の手のひらをかさねおく。
傾き始めた陽と肌の温みが溶けた湿(しと)りが柔らかくつたわってくる。
「やっぱり、あつーい」
「うん、あついねー」
そんなことを言いながら、それでも、手を繋いだまま家路を歩いていく。
「手、はなしちゃう?」
「やだ」
「汗でべとべと」
「やだったら、やだ。はなさないからね」
「ふふふ。変なキラ。変なのっ」
どちらともなく繋いだ手と手をブランコのように揺らしては笑いあう――――――――。
★2009.9.10
title Aコース
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