「………ねぇ、フレイ」

キラは部屋の床に座り込んだまま、恐る恐る自分の椅子に腰掛けて窓の外からのぞく青い海を凝視しているフレイを見上げた。

「………………………なぁに!?」

尖った響きを含ませた清い声が降ってくる。
びくん、とキラは肩を竦ませて、また視線を床へ戻してしまう。
萎んでしまった気持ちを奮い立たせて、またフレイを仰ぎ見た。
自分の唇の端が一度だけ痙攣するのを感じてキラは喉を鳴らして唾を呑み込む。
フレイは机上に頬杖をついて薔薇色の頬をぱんぱんに膨らませている。

「………………怒ってる?」
「怒ってないっ」

尽かさず頭まで突き抜けるような声で返答してくる。
キラは考えを巡らして今日の出来事を思い起こしてみた。
フレイを怒らせてしまうような事が思い当たらない。
さらに、ここ数日間のことも思い返してみる。
いや、午前までのフレイは機嫌がすこぶる良かったのだから――――数日前の出来事は関係ないかもしれない、きっと、多分―――――……。

「ちがうの!」
「へっ!?」
「わたしが今、こんなふうになってるのは、キラのせいとかじゃないの!」

キラは目を瞬いてフレイを見つめた。

「わたしが勝手に怒ってるだけ。キラは、悪くないの!」
「う、うん」
「わたしが悪いの。わたしが悪いのに、なのに、どうしてもイライラしちゃうの!」

フレイは艶々とした薄紅の唇をぎゅっと噤み、微かに目蓋をふるわせる。
何があったのだろうかと詳しく聞きたかったが、フレイから口にしない限りは絶対におしえてはくれない。

「――――フレイは、悪くないよ!」

キラは手を伸ばしてフレイの腕を掴みながら言った。

「フレイは悪くない!」
「………………なによ、それ。わたしがやったこと、キラは知らないくせに!」

頬杖をしていた腕を解きながらフレイがキラを見下ろし、眉根を寄せる。

「悪くないって、そんなこと、軽々しく言わないでよ!」
「うん、知らないよ。でも、フレイは悪くないって僕は言えるよ。どんなことをしても」
「………バッカみたい、バッカみたい、キラってバカね!!」

フレイは眦を吊り上げてバカバカバカと何度も繰り返す。それなのに頬が少し赤くなってきている。
また、バカバカバカと声高にキラにぶつけてくるが、どこか刺々しい響きが薄まっていた。
キラは嬉しい気持ちがあふれてきて、頬と唇が緩んでしまう。

「えっ、そ、そうかなぁ〜」
「バカバカバカバカ言われて、なんで、そんな嬉しそうな顔するのよ、もうっ!!」

一気に声を張り上げたせいかフレイの白く丸い肩が小刻みに揺れていた。
キラが笑いかけるとフレイは頬をもっと赤くさせる。

「キ、ラ、の、バ、カッ!」



2010.12.22
いつもキラとフレイはこんな感じ。
キラに言われて“わたしは悪くない………”と一度はそう思うも“………って、そんなこと思えるわけないでしょおおおキラのバカアアアア!!”となるフレイ。


title たとえば僕が

[戻る]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -