密 肌



重く沈んでいた身が不意に軽くなったような気がした。
のろのろと瞼(まぶた)を開いてみる。
頭を揺らして片頬をシーツに押し付けながら、密かに溜息をつく。
此処にあるのは身を横たえた白いベッドと、そこから見える白い壁と長窓。
刳(く)り貫かれたかのような長方形におさめられた風景は、
空と雲、海と白砂。
それから、後ろから抱きすくめるように肌を合わせて横たわる男の身体。
横向きにさせた背中に男の胸板を感じる。
シーツの下で重ねている腰と腰、
互いに絡ませた脚と脚、
汗ばんでいた肌の青い匂い。

「………あなた、誰?」

背中の男へと尋ねてみる――――長窓へ瞳を向けたまま。
強すぎる陽光によって風景は白く霞んでいる。
空の青さも、雲の白も、海の紺碧も、砂の白さも。
男が静かに身動ぎをした、肌で愛撫してくるように。
唇を耳元に寄せて囁いてくる。

「………わたしは?」

うなじに唇を押し当てながらキラと名乗った男が呟くように告げた。
穏やかな呼吸が温もりとともにうなじを撫でていく。
目の端にはキラの肩先が見えた。
脇の下から腰へとまわされた陽を浴びた色をした腕――――その上にフレイは細く生白い自分の腕を静かに重ね合わせていく。
フレイの頭に、髪に、耳の後ろに、肩先に、何度もキスを落とす。
肌をくすぐる唇と微かに響く甘ったるいリップ音にフレイは喉をふるわせて小さく笑い声を零した。
背中を少しだけ丸めてキラの肌へと擦り合わせると、こめかみに微熱がともる。

「どうしたの?」

問いかけにフレイは口を噤んで頭を緩らした。
喉から嗚咽が込み上げてくる。

「大丈夫だよ、フレイ――――大丈夫」

ふるえはじめたフレイの胸もとを撫で擦ってキラが抱きしめてくる。

「ここにいるから、ずっと」

キラの指先がフレイの頬をすべり、眦(まなじり)に滲む涙を拭っていく。

「そばにいるよ」

囁きつづける声にフレイは頷いた。

「君のそばに――――……」



2009.3.4
キラ×フレイのクローン?
一度書いてみたかった…。

title/亡厭


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