“深 渕”
「何度も過ちを繰り返すでしょう。今までも、これからも。ですが、何度だって過ちに挑み、決して諦めたりしない」
無限に広がる宇宙(そら)へ、
新たな世界へ
さらなる高みへ、
紫苑の瞳は揺ぎ無く、それでいて慈悲深い光を湛えて微笑する。
「人々を導いていくの?」
「人は人を導くことは出来ませんわ。きっと」
「何もできないんだね。それじゃ役立たずじゃない?」
「いいえ、ほんの少し、気づかせるだけでいいのです。わたしたちが滅びる前までに」
地に縛られている人々の瞳を真の宇宙(そら)へと振り向かせることができたら、と。
それだけで充分だと静かな声で言うと白い目蓋を伏せる。
自分たちは、ただの翼なのだと、彼女は言う。
でも、あなたの――――。
「――――その翼は、なによりも美しく、どこまでも力強く、大きくはためくのでしょうね」
その言葉にキラは曖昧な微笑みでこたえた。
★2009.2.26
title/亡霊
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