“朱に染まり揺蕩う罪の果てに残る想いを抱いて”


赤く染まった波音が響き渡る。
凝り濁った朱のうねりが視界にひろがっていた。
うちよせる波が、只中で立ち尽くしたルルーシュの足許を浸し、飛沫をあげながら通り過ぎていく。
そして、過ぎ去ったものが再び背後から押し寄せてくる。
繰りよる波音が徐々に小さくなっていく。
失われていく鼓動に、なすすべもなく、ただ項垂れ、ふるえる身体を自らの腕で抑えて哭くことしかできなかった。
ルルーシュの力は及ばない。
顔を僅かに上げてルルーシュは眼前を見つめ、唇をひらいた。
血のような海で浮かび揺れる少女の名を声もなく呟く。
明るい日差し色の長い髪は朱に染まり、少女の身体をとりまくようにひろがっている。
投げ出された青白い四肢が赤い波に揺蕩(たゆた)う。
少女の胸下に穿たれた悪夢のような銃痕からは、最早、一筋の血も流れてはいない。
すべてが失われてしまった。

「なぜ、こんな――――………シャーリー」

ルルーシュは跪いて永久に目を瞑る少女の穏やかな微笑みを覗き込むように見下ろす。
流れ落ちた涙が少女の頬を濡らしていく。
柔らかな輪郭をもつ頬へと手をのばし、途中で止める。
触れてはいけないのだと。
禁じられた行為だという思いが込み上げ、身を捩って嗚咽した。

“わたし、ルルが好き”

陽だまりを思わせるような笑顔をして少女は甘く優しい声で喜びの言葉をルルーシュへと紡ぎ続ける。

「死、ぬな………目を………目を、あけてくれ………シャーリー」

聞き覚えのある朗らかな笑い声がルルーシュの耳朶を打った。

『――――………の、ために、彼女は邪魔だったんだ』

ルルーシュは顔を仰向かせ、声の持ち主を凝視する。

『――――だから殺した』

少女の傍らで差し向かいに自分を見下ろしている深紫の瞳をルルーシュは睨みつけた。
それは同じように跪くと、口端をゆっくりと上げて唇を微笑へとかたどっていく。

『ナナリーのために。ナナリーが生きられる世界を、つくるために』

吐き気がするほどの笑みにルルーシュは呻き声をあげて顔を両手で覆った。

『そうだろう、ルルーシュ?』

自分と同じ顔をした男の笑い声が朗々と響き渡る――――――――少女が流した血の海をうねらせながら。

『これは、お前がしたことだ。シャーリーを殺したのは、誰でもない、このオレだ』


“オレが、彼女を、殺した。ルルーシュ、お前が―――……”



2008.10.17
2期のルルーシュとシャーリー…。

※title AnneDoll


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