恋人に抱かれながら眠りにつくと見る夢がある。
それは必ずというものではなく――――。
ただ、澱む水面に浮かび上がる泡沫のように。
果たされぬよみがえりを繰り返すように。

見る夢。

“ルルーシュ”

夢の中で。

昔、自分たち――――自分の居場所をつくるために殺してしまった少女が呼んでいる。
あの頃と少しも変わらぬ姿のままで。
見とめると少女は幸せそうに微笑む。

“ユフィ…?”
“キスをしてください、ルルーシュ。昔のように。あの頃のままに”

口ずさみながら無邪気に笑う。

“キスをしてください。また、昔のように”

顔を寄せて、少女のすべらかな白い頬に口づけする。
すると、
いつのまにか、
死んでしまった少女は、昔の想い人の姿と変わってしまう。

“ルル”

夢の中で。
昔、よせる思いを、記憶を、奪ってしまった少女が目の前に佇んでいる。

“シャーリー……”

名を呟くと、少女は嬉しそうに笑い、両腕をひろげてくる。

“キスをして。ルル、あの時、くれたキスを”

瞳を輝かせながら爪先立ち、悪戯っぽく覗き込むように見上げてくる。

“ルル、キスをして”

薔薇色に染まる頬に手を添えて、唇をかさねる。
溶けるほど甘い少女の唇へと。
抱き寄せた少女の姿は――――いつの間にか――――今の恋人の姿となってしまっていた。

“キスをして”

甘く、この上なく苦き――――。

“あの時、くれたキスを”

あの少女は消え失せてしまっていた。
煙靄のように、
胸の奥で燻りつづける。
その燃殻の捨てる場所が見つからず、灰色に薄くたなびく煙の中を。
まるで、その煙のように漂う。
死に果てたものを抱いて。

恋人を抱いた夜に見る夢がある。
それは必ずというものではなくて――――。

もう涙は枯れ果ててしまっていた。

“夢に燻る、あの亡骸の灰を”



2007.5.13→5.31up
ルルユフィ・ルルシャリ、のつもり。
カミングスの詩「感情が第一だから」から“わたしのいのちが賛成します そしてキスは智識よりもより宿命です”のイメージも混ざって、こんなものができました〜。
恋人に抱かれながら別の女たちのことを思うルルーシュ……。

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