カチリと硬質的な音が響いたと同時にサイドテーブルにある陶磁製の時計へと手を伸ばした。
自鳴琴に似た、暢気で不愉快なアラームが早朝の清しい空気に満ちた部屋に鳴り響かせたくない。
目蓋を指で撫でると雲雀はすぐに身を起こした。
「…………」
ベッドの真ん中やや右寄りに薄らとした膨らみがある。
ため息を吐くとパステルカラーのシーツを勢いよく剥ぎ取った。
「起きるよ」
雲雀の腰辺りで手足を丸めて横たわっているクロームを見下ろす。
「……………うん」
頷きながらもクロームはもっと丸くなって握り締めた両手に顔を伏せる。
「ねぇ、聞いてる?」
「……………うん、ねむい」
雲雀は眉根を顰めると丸っこくなっているクロームを引っ張り上げた。
「休日だからってダラダラしてるのは嫌いなんだけど?」
雲雀の胸にくてんと垂れているクロームの顔を覗き込みながら言ってみる。
クロームは緩々と薄紅の目蓋をひらいていく。
完全に寝惚け眼だ。
「……………うん、恭弥、さむい」
危なっかしく頭を揺らすと今度は雲雀の肩先に額をのせて、小さくくしゃみをした。
そして、すぐに微かな寝息をたてはじめる。
「ダラダラするの嫌いなんだけど」
ぽわぽわとしたクロームの柔らかな繊髪に頬をくっ付けて呟いてみせる。
肌に響いてくるのは温かく安らかな寝息―――――――シーツを再び引き寄せながら雲雀は抱いているクロームとともにベッドへと横たわった。
「少しだけだよ、わかってる?」
くしゅ、と微かにまたくしゃみをする。
雲雀はため息を吐いた。
自分とクロームの身体にシーツをぐるぐると巻きつけると小さな頭に顔を埋めて目を瞑る。
その次に雲雀が目覚めたのは昼も過ぎたころだった。
<end>
★2011.3.24
企画・捧げもの。
◎title たとえば僕が
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