困ったような表情を浮かべて、こちらの顔をのぞきこんできた。
熱っぽい雲雀の額に白く小さな手のひらをのせて、少しだけ首を傾げる。
「………………まだ、熱い」
ふっくらとした桃色の唇から呟きをこぼす。
「ここ、どうして?」
額に置かれたクロームのひんやりとした手のひらの心地よい温度にかえって落ち着かなくなり、雲雀は掛け布団をはらいながら上身を起こす。
「………ダメ」
雲雀の動きを止めさせようとして躊躇いがちに胸もとを押さえてくる。
「恭弥、今、熱があるの」
「風邪じゃないし、いいでしょ」
この部屋から早く出ていきたい。
深い藍色の瞳から逃れたい。
ひどく恥ずかしい――――――――これまでにはなかった気持ちを起こさせる存在から遠ざかりたい、早く。
六道骸とくだらないことで争っているうちに小動物たちとも衝突して、力を全開にして暴れまわり、全員をぶちのめした挙句、興奮のあまり熱を出して自分も倒れるなんて無様すぎる。
今まで、この性癖をどうと思ったことなどなかったのに。
「動いちゃダメ。横になって、静かにしてれば、熱、ひくから。落ち着かせなくちゃ………」
頼りない白い腕をどうしても振り払うことができず、雲雀は渋々、クロームに従って身を横たわらせていく。
“君がいると鬱陶しいから部屋を出てくれる?”
そう言えたら、熱はすぐにひくような気がする。
けれど、心は今よりさらに重くなることもわかっていた。
どうしてこんなにも重い。
ふと違和感を覚えた。
雲雀はベッドの傍らに置いた椅子にすわって濡らしたタオルを整えながら折りたたんでいるクロームを見やる。
「なんで、君は骸のところにいかないの?」
「………………骸様が恭弥の看病をしてあげなさいって」
「――――あいつ!!」
<end>
★2011.4.9
企画・捧げもの。
◎title たとえば僕が
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