寝室の扉がゆっくりと開いていく音がした。
か細く澄んだ玉声で呼びかけられたU世は短くため息を吐くとソファの背もたれに上体を預ける。
「――――また、おまえか」
U世は声が響いた方向へ視線を送る。
扉近くにある衝立代わりに東洋から取り寄せた植物の葉陰の傍らに佇んでいる少女を認めるとU世は僅かに口角を上げた。
少女は途方に暮れた表情をしてU世を凝っと見返してくる。
「―――――そばへ来い」
その言葉を投げかけると暖炉の燠火(おくび)が映りこんだ淡色の寝着につつまれた少女の肢体がぴくんと動いた。
躊躇いつつも歩んでくる静かな足音が聞こえてくる。
「………ボンゴレU世」
その呟きにU世は眼前に立つ少女を見上げて、か細い腕を掴むと強引に胸もとへと引き寄せた。
「………あっ」
倒れこみ、腕の中へと転がってきた痩せネコのような少女の身体を抱きしめる。
「やっ………」
足掻きはじめた少女を抱き潰すように重みをかけると腕の中で儚い鳴き声を上げる。
すぐに腕の力を解いて、くったりとして大人しくなった少女の白く繊い首筋に鼻先を埋めた。胸裏をくすぐる清い香りを嗅ぐと白く柔い肌がぴくんっと揺れる。
倒れこんだ拍子に裾が捲れて露になった細い足に手を這わせると身を丸めて羞恥に肌をふるわせた。
しっとりとした雪膚はほのかに朱と染まり、衣越しに少女の肢体の火照りを感じる。
U世は胸下にもたれている力ない小さな頭を見下ろす。
「この間の―――夜に名前をおしえただろうが」
上身を屈めて微かに濡れた漆黒の髪が一筋絡みついている薄紅の耳朶に唇を寄せて囁く。
「――――ベッドの中で」
「………っ」
小さく息をのむ音がした。
「オレの体の下で」
笑い声を響かせながら言うとみるみるうちに少女の頬が赤くなった。
「鳴きながらオレを呼んでみせろ」
微かに濡れた眦を舌で舐めると、微かに色めいた声をあげて、ふっくらとした花弁のような唇をふるわせた。
「――――………だ」
ぴくりとまた少女が身動きをして名前の響きをたどるようにつぶらな深紫の瞳を瞬かせる。
「………あっ………やっ――――……っ」
裾から手をもぐりこませて薄い下腹部をまさぐると少女は身を捩らせて濡れた唇から甘酸っぱい息と声を漏らした。
「そうだ、もっと呼べ――――」

<end>



2010.11.15
site up 2010.4.3
セコ髑――――!!
捧げもの小説。
◎title 影




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