06 +
ゆるやかな音楽とともに下校の放送が校庭を響き渡っていく。
部活動で賑わっていたグランドも太陽が傾くにつれ少しずつ穏やかになって、所々でぽつぽつと片づけが開始されている。
校門へと続く道の傍らにある防球ネットが大きく揺れて、使い込まれた野球ボールが土の上にに落ちて跳ねた。
連続で聞こえてくる晴れやかなバッティング響きと声援――――――クロームは立ち止まってリズムよく跳ねるボールを見つめる。
視界に砂を被った野球シューズとボールを掴む白い粉がついたクロームよりもずっと大きな手が飛び込んできた。

「よう、クローム!」

緑色の防球ネットがやわらかい音を立てたので顔を上げると、向こう側にユニフォーム姿の山本武が立っていた。

「ごめんな、びっくりさせちまったか?」

クロームは頭を振るとにこやかな武を見つめる。
片方の頬と顎に白っぽい粉が付いていた。

「今、帰るところか?」

武は周囲を見渡し、ネットに指を絡ませて引っ張りながら尋ねる。

「うん」

そして、もう一度、周囲へと目を向ける。

「一人なのか? 笹川たちはどうした?」
「うん。京子ちゃんは委員会。お兄さんも」
「ツナと獄寺は?」
「……………補習」
「炎真は?」
「……………補習」

武はまじっとクロームを見下ろすと『しょーがねーなぁ』と言いながらあっけらかんと笑う。

「一人じゃあぶねーよ。あ、雲雀のやつは!?」
「………えっと、隣町行ってる。誰か咬み殺しに」
「マジかよ!」
「あ、あのね、そこの並盛商店街で、ハルちゃんと待ち合わせしてるの。だから」
「そっか、それなら安心だな」

安堵するように武は一気に破顔する。
クロームは急いで鞄からハンカチを取り出して武へと差し出す。

「どうした?」
「あの…」

武の顔に付いている白粉を拭おうとしたがネットに阻まれていることに気が付いてクロームは口ごもる。
が、武はすぐに気が付いたらしく、袖で顔を拭う。

「へへ、サンキューな! んじゃ、三浦によろしくな!」
「うん。……じゃあ、さよなら」

「また、明日な!」

武がネットの向こう側から笑顔で手を振っている。

「うん、また明日」


また明日
<<  >>
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -