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にこにこと笑うミハエルを凝視してネーナは確信をもって大きく頷いてみせた。
「―――――――俺のネーナは可愛い!」
人差し指を鼻筋の通ったミハエルの顔に突きつけて言い放った。
「おお! あったり〜!」
「じゃ、次はミハにぃの番!」
「よっしゃ!」
腕組をしてネーナはふんぞり返る。
ミハエルは椅子の座面に両手をついて大きく前かがみになり、鼻歌をしながらネーナの顔をのぞきこむ。
「ミハにぃ、かっこいいぃ!」
「ぶっぶー! “ミハにぃ、単純!”でした!」
唇を突き出して間違いの効果音を声で出す。
「んなっ! ひっでーよ、ネーナぁ」
「はい、つぎ! 今度はわたしが当てる番」
ネーナが睨みつけるとミハエルは拗ねたような表情をして大きな身体を竦める。
「―――――――“それでも俺のネーナは可愛いっ”」
「あっ、あたりだ〜!! ネーナ、すっげー!!」
先ほどの不満そうな表情をあっという間に払拭させて、にぱっと幼子のように笑う。
ネーナはピースの形にした指をミハエルの眼前で振りまくった。
「ミハにぃ、素敵ぃ〜!」
「ぶっぶー! “ミハにぃ、単純でおもしろいっ!”」
「ちぇっ! んじゃ、オレね〜」
「―――――――あ〜、やっぱり俺のネーナは可愛い」
「うわ、マジか! ぴんぽーん!!」
「さすが、わたし!」
「ミハにぃ、頼りになるぅ〜!」
「ぶっぶーぶ! “ミハにぃ、単純でかっわいいー!”」
「そんなに単純なのかな〜、オレ」
「―――――――ほんと、俺のネーナは宇宙一可愛い!」
「すっげー! 俺のネーナ、すげぇ!!」
ふっふっふふふとネーナが満面の笑みでツインテールの髪が跳ねるほどにスチール椅子を揺らす。
「じゃ、これが最後だよ! ミハにぃ、頑張って!」
ネーナが姿勢を正して、すまし顔でミハエルを見つめる。
最後だという言葉にミハエルは緊張した面持ちで眉間に皺を寄せて小さく唸り始める。
「………ミハにぃ、おもしろくてカワイイ〜」
「ぶっぶっぶううう!!」
ネーナが両肩を怒らせて一段と大きな声でダメ押しをしてミハエルはがっくりと肩と頭を下げた。
そんな様子のミハエルを見つめてネーナはくすりと愛らしい笑い声を転がす。
「正解は“そんなミハにぃをネーナは愛してる、大好き、愛してる、大好き、愛してる”だよ!」
慌てて項垂れていた頭を上げるとミハエルは目を瞠ってネーナへ迫るように身を乗り出させる―――――――目が潤ませながら。
「オレもっ、オレも愛愛愛してるぜ、ネーナぁ―――――――!!」
椅子から転げ落ちそうになるほどのいきおいでネーナに抱きついてミハエルは嬉し涙にむせびだす。
「………いったい、お前たちは何をしているんだ?」
途中から傍らで黙って立っていたヨハンは二人を見下ろしながら尋ねてみた。
ネーナとミハエルが頬をくっつけあって晴れ晴れとした破顔をヨハンへと向けてくる。
「目で語りあってるんだよ!」
「な〜!」
「そうか……。目で、語りあって…る。…のか?」
ヨハンは無邪気に答える二人をまじまじと見つめて首を傾げる。
「ヨハンにぃ、わたしたちが今、目で何て語ってるか当ててみてよ!」
「兄貴! オレたち何て言ってるか、わかるか?」
この上なく瞳を輝かせ、頬を上気させた稚(いとけな)さ満々杯な弟妹にヨハンは少々たじろぐ。
目で語る
◎ヨハンにぃ、愛してるってミハエルとネーナは語っている。