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「やだ、眠れない……」
そう呟くとM・Mはフリルピローを抱きしめながら寝返りを打った。
ベッドの傍らにあるサイドテーブル上の時計へ視線を転じて時間を確かめる。
もう真夜中の12時になってた。
いつもなら、とっくに眠りについているはずなのに。
このままだと明日の肌事情が大変なことになる。
「冗談じゃないわ! 明日の私も完璧じゃないと!」
M・Mは慌てて起き上がり、ブランケットを捲り上げるとベッドから飛び降りた。
部屋を出ると胸に抱きしめたピローとともに廊下を走り出す。
目的の部屋へたどりつくとM・Mはドアを開け放った。
「骸ちゃん、起きてる!?」
部屋を横切りながら寝室へと飛び込み、ベッドで本を読んでいる骸の姿を捉えるとM・Mは駆け寄っていく。
「おや、どうしました?」
「お金あげる! だから今夜は骸ちゃんの隣で眠るわ!」
骸の返事も待たずにM・Mはベッドへと転がり込む。
キング・ロングサイズよりもひとまわり大きな特注の寝台なので簡単に潜り込めるし、広々として気持ちがいい。
「それぐらいで、お金なんて取りませんよ」
相変わらず曰くありげで辛気臭いご大層な装飾の書物に目を向けたまま骸が素っ気無く言う。
「そこまで鬼じゃありません、僕は」
「いーの! タダなんて、オエーだわ。気持ち悪いもの!」
M・Mは骸の腰に頭を寄せてぴったりとくっつかせると目を瞑った。
鼻先にすべるようになめらかに香るクラシックウッディにつつまれて、ようやく安堵する。
「M・Mの好きになさい」
耳に心地よい言葉と響き、それから静かな笑い声がこぼれたのを聞きながらM・Mは眠りの世界を迎えた。
不安定