斑の木星/キョーカ


灰色に塗りたくられた空に捧げる御魂
高き場所から伸ばされた触手が
受け取るのを見届けてから
わたしは叢に大の字に倒れ込んだ

理由はない
あることを拒んだからだ
畏れを忘れないために
選んだ最善の道

躯をぞわぞわと夜光蟲が這い
彼らの吐く無色透明の瓦斯が肺に満ちて
意識はいずこかへ吹き飛んで行った

ぼんやり加速を味わいながら
あの轟く霹靂を追い抜けると錯覚し
頓珍漢でお菓子な空間で
名を叫ぶため息を吸い込んだ

一体誰の名を?
何かが意識を此処へ引き寄せる
絶対の気配を感じながら
まだ捉えることは出来そうにない

わたしは考える葦に相応しいのだろうか
別の疑問符が先の疑問符を沈める
すると遠くで爆発音がして
更に思考は渾然一体の様相を呈す

まるで斑の木星のようだ
手首に絡まる蔦の枷が縛り付けるのは
何もリアルだけではない
ただただ無意味に巨大な物質が
脳髄を有刺鉄線で締め上げるのだ

更に世界を漂えば
永遠のローシュタインの回廊が
口を開けて待っている
飽きるまで走るがいいと声がする
読み取られた心に罅が入り
極彩色の血液が流れ出す

循環する真理をそこに見る、

なのに
まだ、まだ届かない
あの高き場所に
御許へはあまりにも遠い

ああ、しかし
まだ手招いている
涙が溢れ頬を濡らした

わたしは応えるために泳ぐ
その腕は最早人ではない
なお目指すはその高き場所
無数の夜光蟲を吐きながら



▼作者コメント

その先に視えるものと、その名を呼ぶべきもの
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