▼狡猾でひどい弟×人妻♂な兄
狡猾でひどい弟×人妻♂な兄
※NTR
※近親相姦
※虐待、DV的な描写あり
※受けがかわいそう
※攻めがひどい
映画館のアルバイトとか、本当はどうでもいいけれど。
「ってわけで、夏の間だけ、こいつここで暮らすから」
歳の離れた兄さんは、俺のことを弟というより子供だと思っている。
もう俺の方が背だって高いのに、手を伸ばして頭を撫でようとしてくるのだ。
「あ、んだよ撫でさせろよ! つれねーの」
「……兄さん、和洋(かずひろ)さんに説明してなかったの?」
「だって、和くん絶対反対するし」
たしかに歓迎はされていない。俺たちはいまだに玄関で突っ立ったままだし、和洋さん――意地でも義兄とは呼ばない――は、嫌味ったらしい愛想笑いを浮かべて、「俺たち新婚なんだけどな」と吐き捨てた。
「……兄さん、やっぱり悪いよ。俺、邪魔だろうし」
明るくて裏表のない兄と違って、つくづく自分はいやらしいやつだなと思う。こういう風に振る舞えば、兄さんの気を引けると熟知しているのだ。
「んな事ねえって、遠慮すんなよ」
「ううん、やっぱり、実家から近いバイト探す」
「だめ、だってお前映画好きじゃん、せっかく映画館のバイト受かったんじゃん」
「……でも」
チラリと視線を移せば、兄さんの視線も和洋さんに向く。
「いいじゃん和くん、なあ、俺のかわいい弟ちゃんだぞ」
「あのなあ、こんなこと言いたくないけど……俺たちだって先週越してきたばかりだろ、まだ二人だけの時間を……」
そのまま喧嘩して離婚してしまえ。今回別れなくても、俺は何度でも邪魔してやる。お前を悪者にしてやる。俺の兄さんを奪った害獣め。
突っ立ったまま俯いて、一歩後ろに退く。心の中ではボロカスに悪態をついているが、表情は悲しげに、沈んだ感じで。
すると兄さんは焦った顔で、和洋さんに耳打ちをした。
「……大丈夫だって、エッチはこれまで通り、激しくやってもいいからさ」
「こら、弟君の前でそういうことを……」
「つーか、むしろ燃えんじゃねえの。和くんそういうとこあるの知ってっからな」
「はあ……ああもう、わかったよ、これじゃ俺が悪者じゃないか」
少しわざとらしかっただろうか。和洋さんは気まずそうに態度を軟化させ、「じゃあ、上がって」とスリッパを差し出してきた。
「やった! やったな、圭」
「……お世話になります」
「バイト頑張れよ、未来の映画監督さん」
「もう、兄さんはそればかり」
映画は嫌いではないが、正直、特別好きでもない。
昔兄さんがエキストラで映ったシーンを狂ったように見ていたら、映画好きだと思われるようになっただけだ。
そして俺はその思い込みを訂正することなく、そういう専門学校に入って、バイトもその方面ときた。
「……うれしいよ、また兄さんと暮らせて」
「圭! なんだよ、かわいいやつめ! 撫でてやるから屈めよ!」
「はいはい」
「うわ、抱き上げんなし! お前が屈めよ!」
ひとまず、彼のそばにいられるいい口実ができた、なんて、映画に対する情熱はほんのその程度だよと告白したら、兄さんは呆れるだろうか。
和洋さんが不安そうにこちらを一瞥した。俺は軽く微笑み返す。
その不安、的中していますよ、と。
***
「一つなわけ、ない……」
兄さんたちの寝室のごみ箱には、コンドームの空き袋が一つだけ捨ててあった。
明け方まで聞こえていた喘ぎ声や、俺の部屋にまで伝わっていた振動の激しさからして、絶対にコンドーム一つ分の内容ではなかったのに。
――――途中から、生でヤッたんだろうな……
嫌な汗が吹き出してくる。居てもたってもいられなくなって、洗濯物を干す兄さんの元に向かう。
時折腰を擦りながら、鼻歌まじりでYシャツを広げている彼に、「なあ」と声をかけた。
「ん? どした?」
「あ……いや、その……」
勢いで来てしまったから、話したい内容が固まっていない。
ゴミ箱を漁ったことを知られたら気味悪がられるだろうし、ただの雑談をするには、一言目の「なあ」は暗いトーンだった。
「あ……ちょっと、兄さんに相談があって」
「うん」
「体調が、あんまりよくないんだよね……学校とか、バイトとか、慣れない環境のせいだと思うんだけど……」
「お前、俺と違って神経質だもんな。ま、そういう時はダラダラ寝てんのが一番っしょ、俺も腰痛いし」
空になった洗濯籠を持つ姿は、俺の知っている兄ではなくて、他人の妻♂の顔をしていた。
「昔みたいにさあ、いっしょに寝る?」
昨夜、あんなにうるさく喘いでいたくせに。和くん和くんと害獣の名前を呼んで、下品な言葉を言わされて、うれしそうに乱れていたくせに。
「はは……そういうの、いつぶりかなあ……」
俺の事を何も知らない子供だと思って、俺が狙っていた通りの言葉を投げてくれる。
以前より肉の付いた腰回りを、愛おしそうに擦る仕草さえなければ、俺はもっと幸せな気持ちになれただろうか。
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