あーあ、しくったな。何をどうしくったのかは微妙だが、とにかくしくっちまったもんは仕方ないだろ。朝寝坊して監督に怒られたりだとか、罰として雑用全般押し付けられたりとか、その一貫で買い物に一人できたりとか、うん、仕方ない。が、上手くタイミングをずらすことだけでも出来ていたら、こーんなめんどくさいことにはならなかっただろうに。あー畜生、しくったな。


涼野「相変わらず幸薄そうな面構えだな。禿げるぞ」
南雲「会って一言目にそれってお前最低」
照美「名前か名字くん!なかなか久しぶりの再会じゃないか!」
名前か名字「あぁ……」


このテンションついていきたくねー……涼野とか消えて木っ端微塵に吹き飛べばいいのに。





俺と神様と中二病





何故だ。何故こいつらがライオコット島に当たり前のようにいるんだ。しかも南雲はまだ通常通りのラフな格好だからまだいい。問題は涼野とアフロディだ。
どこの民族衣装ですかね。上半身露出に加えて下は葉っぱのスカート。手足には蔦みたいなのがぐるぐる巻かれてて、首飾りについてるキバが原始的な個性を演出している。うん、そうゆう時代に帰れ頼むから。


名前か名字「なんだその格好」

涼野「羨ましいか?先ほどそこの屋台で購入した最新デザインのコトアール風正装だ」

名前か名字「これが?縄文時代みたいなこのスタイルが正装?めっさ蚊に刺されるぞそして葉でかぶれるぞ」

アフロディ「そんなことないよ!僕たちは何を着ても似合うから何にも問題ないのさ!」

涼野「同感」

名前か名字「ちょっ日本語通じてますか」

南雲「わりいな、俺はダセェからやめろっつったんだが、こいつら聞かなくてよぉ…」

涼野「誰がダサイだと効果音の分際で」

南雲「んだとコラ……」

アフロディ「まあまあ落ち着きなよ君たt」

涼野南雲「うっせ国籍偽装ナルシストひっこめ」

アフロディ「HAHAHA!今日も素晴らしい息の合いようだね!照美泣いちゃう!」

名前か名字「コントならよそでやってくれませんかね。通行の邪魔なんで」

アフロディ「ああん!よそよそしいよ名前か名字くん!」


実際とりたてて仲良くねえよ、というツッコミは胸の内にしまっておこう。
どこぞの星に迷い込んだみてえだな、とアフロディと涼野の姿を見ながら俺は南雲と同時にため息をついた。哀れな南雲くん。こいつも相当苦労してんだろう。年中無休で中二病患者たちの相手をしていたら。
あっ、南雲もだった。


名前か名字「……で。なんでお前らこんなとこにいやがんだ」

アフロディ「いい質問だね。我々は、そう――」

涼野「ただの観光だ」

アフロディ「いっちゃったよ。もうちょっとなんかこうさ……」

名前か名字「ただの観光でそんな服をわざわざ購入する意図がわからない。むしろお前たちの頭のイカれ具合をゆっくり見てみたい」

アフロディ「失礼な!僕の肉体美を強調するのに最適な衣装だとは思わないのかい?」

涼野「それに服を買わなければならなかった正当な理由もある」

南雲「お前それ昼飯に食ったイカスミスパゲッティこぼしただけのことだろ」

涼野「もう二度とイタリアエリアにはいかん」

名前か名字「何歳だお前」


いや、聞かずともわかってはいるが。それでも言わずにはいられないのはツッコミの悲しい性だ。


南雲「んなことより名前か名字、あんたこの辺りにあるうまいケーキ屋知らねえか?」

名前か名字「ケーキ屋?いや、覚えはないが」

南雲「日本エリアでもねえとなると、あとはアメリカエリアだな」

涼野「全く、早くこんなこと終わらせたいね」

名前か名字「なんかあんのか?」

南雲「瞳子姉さんや怜奈に頼まれてんだよ。なんかライオコット島限定の菓子があるらしくてな」

アフロディ「僕はなんとなく面白そうだからついてきただけさ」

名前か名字「そりゃ結構なことだが…お前ら、アフロディと涼野」



その格好で、店に入るつもりなのか………?



アフロディ「……」
涼野「……」


にこっ。
背筋が凍りつきそうなほど冷たい微笑を浮かべ、二人は親指を立てた拳をつきだした。
「も・ち・ろ・ん!」と口パクで伝えられたが、知らん顔してた方がいいことも世の中にはあるよな!



名前か名字「じゃあ南雲、あとはがんばれよ!」

南雲「てめっ、恨むぞあんたぁああああっ!こいつら放置したら何しだすかわかんねえよぉおぉぉぉっ!!」

名前か名字「韓国の事情に余計な口を挟む必要はないな」

涼野「その通りだ。仮にケーキの口直しに私が南雲を美味しくいただくとしても貴様には関係ない話だ」

南雲「涼野くん涼野くん。デザートはそれ自体が食後の口直しをするためのものだと思います」

アフロディ「しかも二人がそういう雰囲気になったら僕がすごくいたたまれないと思います」

涼野「まだいたのかアフロディ、早く自分の星に還れ」

アフロディ「えっそれ僕よりも君たちじゃ――」



(なんとなくアフロディの後ろにヒロトの面影をみた、そんな一日)


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