俺の仕事は目金と同じ、情報収集要員兼サポーターだ。監督みたいに、とはいかないが、ちょくちょくコートの外からそれぞれの選手にアドバイスしたりしてる。影で皆を支えるって点ではマネージャーに酷似してるのかもしれない。種類は違うが。
今日も普段通りの練習内容だった。簡単なウォーミングアップから入り、パス練をし、個人練習の後に簡単なミニゲーム。皆もいつもと同じように、集中して取り組んでいた。
ただ、一人を除いて。





病院に行きましょう





佐久間「………」


おかしい。あきらかに様子がおかしい。どれくらいおかしいかって言うと、サッカーより野球をやりたがる円堂と同じくらいおかしい。


鬼道「佐久間……」

佐久間「悪い、鬼道…今は何も言わないでくれ……」

鬼道「……」


おかしい。すっごくおかしい。年がら年中鬼道の尻を追いかけているstkが、今日はやけにシリアスな雰囲気を放っている。
これは放ってはおけない。直感的にそう判断した俺は、佐久間に歩み寄った。俺を見ると不可解そうに眉を寄せ、けれどすぐにため息と共に視線も落としてしまう。重症だ。


名前か名字「どうしたんだ、佐久間。体調が良くないなら、無理はしないほうがいい」

佐久間「……」

名前か名字「お前は日本代表の選手だ。体を壊してもらっちゃ困る。…病院行くぞ」

佐久間「……それで治るとも思えないがな」

名前か名字「どういうこった」

佐久間「そのままの意味さ。……自分でも、よくわからないんだけどな」


憂いを帯びた佐久間の瞳は、どこか遠い彼方を見つめているかのように見える。今まで見たことのない奴の本当に切なげな表情に、俺はこの事態の由々しさをようやく本格的に理解した。このままでは、佐久間は――
ごくり、と息を呑んだのは俺だけじゃない。後ろで会話を聞いていた鬼道も、佐久間を心配そうに見つめている。

当然のことだが、奴の不調は午前だけでなく午後も同じように続いていた。ボールへの反応は遅く、体力の消費も著しい。監督もそれを見抜いたのだろう。佐久間に「今日はもうあがれ」と指示を出していた。一人練習を切り上げさせられてしまった佐久間は、とぼとぼとベンチに腰かける。俺はどうしても放っておけなくて、佐久間の隣に座った。ちらりとこっちを見たが、拒絶はされなかった。


名前か名字「佐久間……」

佐久間「はは。…ひどい様だな、俺。帝国の皆にも合わせる顔がない……」

名前か名字「そんなことねえ。……絶対、そんなことねえから」


がんばれ、とは言えなかった。充分佐久間はがんばって、苦しんでいる。そんなこいつに、これ以上追い詰めるような言葉はかけられない。


名前か名字「やっぱり病院行こう。俺もついていくから。せめて検査だけでも、な?」

佐久間「……名前か名字」

名前か名字「………どうした」

佐久間「なんとなく…いや、たぶん確実に……理由は、わかっているんだ」

名前か名字「なに?」

鬼道「ならば早々に解決策を練ればいいだけの話だ」


いつの間にか現れた鬼道が横から口を挟む。が、今回は鬼道の言うことが正しい。原因がわかっているなら、それを修正するのはたやすいはずだ。


鬼道「それで、佐久間」

名前か名字「その原因って?」

佐久間「………ぃんだ」

名前か名字「は?」




佐久間「源田が!足りないんだぁあああああ!!!」




それはそれはもう、グラウンド全体に響き渡るほど無駄にでかく、透き通って凜とした声が辺り一帯に轟いた。


名前か名字「……」

佐久間「源田が足りない源田が足りない源田が足りない会いたい会いたい会いたい会いたい犯したいあっやべつい本音が」

名前か名字「……」

佐久間「あいつがいないと俺はダメなんだ、最近じゃパンツは絶対裏返しで履いちまうし靴下は違う柄になるし眼帯からまた赤い目が飛び出しそうになる」

名前か名字「……」

鬼道「ならば日本から源田を呼べばいいだけだろう」

名前か名字「……」

佐久間「本当か鬼道!あいつが……ここに?」

鬼道「よし、今メールが…来た!明日には来れるそうだ。良かったな、佐久間」

佐久間「yahoooooh!!」

名前か名字「…おい、佐久間」


俺は笑顔で、一言。



名前か名字「病院行け」

(頭のな)


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