それは彼女の、何気ない一言から始まった。



音無「名前か名字さん、よかったら買い出しに付き合ってもらえませんか?」

名前か名字「……え?」

音無「いえ、忙しかったら別にいいんですけど!ちょっと荷物が多くなりそうなので、誰かに付いてきてほしいなー、なんて…」

名前か名字「ああ、わかった。付き合うぜ」

音無「本当ですか!ありがとうございます名前か名字さん!」

名前か名字「(ああもう!音無超かわいい!!)」






お義兄さんと呼びたい







前提として先に述べておこう。俺はサッカー部マネージャー一年、あの鬼道有人の実の妹である音無春奈に密かに想いを寄せている。というか好きだ。ぶっちゃけめっちゃくちゃ好きだ。グラウンドの中心で愛を叫びたい。(そんな勇気はないけれど。)
活発で人当たりのいい性格、おてんばすぎるのもまた一つの魅力だし、一方ではつらい過去と向き合って乗り越えるだけの強さも持っている。しかもかわいいとかおまっ、惚れない方がおかしい。いや他のイケメン野郎逹に惚れられても困るが。

まだ本人に気持ちを伝える勇気はないので、今のところは仲のいい先輩後輩のポジションに甘んじている。が、そんな平凡な中学二年生の恋路にはとてつもなく大きな障害があった。それがつまり、


鬼道有人(14)。




鬼道「許さんぞぉ!!」

名前か名字「うおっ?!」

音無「お兄ちゃん!」




突如地中から飛び出した鬼道は赤いマントをはためかせながら俺と音無の間に降り立った。邪魔くさい以前になんで地面の中で待機してたんだよもはや人間じゃねえよ!




鬼道「名前か名字、貴様俺の妹をたぶらかすとはどういうことだ股間にスピニングカットされたいのか」

名前か名字「その最愛の妹の前で股間とか言うんじゃねえよ」

鬼道「下ネタを言うな馬鹿がぁああ!!!」

名前か名字「えええ理不尽!」




これが最大の障害。
鬼道有人14歳、男。イナズマジャパンの司令塔の一人。職業はシスターコンプレックス。
職業じゃねえだろ、なんて当たり前のツッコミは受け付けない。もうそんなどうでもいいことはいちいちかまっていられない。

俺はこの男をサッカープレーヤーとしては尊敬している。一応。が、プライベートではそうもいかない。
仮に。仮にだ。音無に告白してオーケー貰えたとしても、この男に認められない限り俺の戦いは終わらない。たぶん別れるまでしつこく絡まれるぞ。毎日ねちねち陰険つけては唾を吐きかけてくるに違いない。それは無理メンタル的に鬱になる。




鬼道「春奈、騙されるな。男なんてみんな下心の塊だ。みんなみんな狼さんなんだ!」

名前か名字「その狼さんにお前も含まれてんじゃん」

鬼道「俺は!春奈のたったひとりのナイト!」

名前か名字「そうですか。じゃあ害虫駆除がんばってくださいさようなら」

鬼道「害虫は貴様だ名前か名字!!春奈に近寄る男はみんな俺が抹殺する。恨まないでくれ」

名前か名字「恨むに決まってんだろ!つかダチに向かって害虫とかお前最低だな!」

音無「そうよ!お兄ちゃんいい加減にして!」

鬼道「!!」がーん



▼鬼道に 150の ダメージ!

つか音無の一言でよくあれだけ沈めるな……いや、俺もそれは共感できるから何も言うまい。



名前か名字「ただ買い物に行くってだけじゃねえか。何をそんなにむきになって…」

鬼道「それは所謂デートだろう!!」

名前か名字「……!!」




でっ、デートだと…?!

ばばばばばかなそそそそそんなことあるはずが、だだだだいたい音無はただ単に人手が必要だっただけで今日のおかずはなんだろう海に潜りたいry(※混乱中)




鬼道「春奈はまだ一年生だぞ?!デートでいやんあはんな展開になったりでもしたらどうするんだ!!」

名前か名字「ならねえよ!つかしねえし!」

鬼道「しないとはどういうことだ!春奈の魅力が貴様にはわからんのか!!」

名前か名字「もはや何言っても駄目なんじゃねえか!つか、音無の魅力なんて指摘されなくてもわかってるっつうの!!」

音無「えっ」
鬼道「えっ」

名前か名字「……え?」

音無「あ、えっと…ありがとうございます……?」

名前か名字「あ、ああ、どういたしまして……」




墓穴掘ったぁああああ!!!
もう俺むりいっそ死んでしまいたい。本人前にして何熱くなってんだ穴があったら入りたい。




鬼道「名前か名字、貴様には色々と聞かなければならないことがあるようだな…」




やだもう鬼道ちょう怖いんですけど。ちょっと口滑らせただけじゃん…つか全部悪いのはあいつじゃね?やるせなさこえて鬱としか言いようがないな。











不動「……鬼道くん」

鬼道「!!」



振り向いた鬼道の視線の先には不動明王(14)。鬼道と相反するもう一人の司令塔、だったはずなんだが。知らないうちに出来上がっていた(あっち的な意味で。)という事実は今となっては周知のことだ。



不動「やっぱり鬼道くんは妹しか見えてねえんだな…」

鬼道「ちっ違う!誤解だ!」

不動「男はみんな獣なんだろ一生妹の尻追っかけてろよぶああああか!!!」

鬼道「ふどぉぉぉぉ!!」




ドタドタとやかましい音をたてて一瞬で走り去ってしまった二人。放置された俺と音無は無言で二人が走っていった方角をただ見つめることしかできなかった。
結局、あいつら何しにきたし。






名前か名字「……」

音無「……」

名前か名字「……そろそろ行くか、買い出し」

音無「!は、はい!」







(お義兄さんって呼べるようになる日?たぶん一生こないと思う俺のメンタル問題で)


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