音無「あ!名前か名字さん、おはようございます。体調は大丈夫ですか?」 名前か名字「あ、ああ」 音無「最近忙しかったから疲れてたんですね。これからは無理しないで、もっと私たちに頼ってくださいよ?そのためのマネージャーなんですから!」 名前か名字「…あのさ、音無」 音無「はい?」 名前か名字「……話があるんだけど、ちょっといいか?」 一言、伝えさせて下さい 緊急会議の翌朝、俺はとうとう音無を呼び出した。呼び出しだよ、なんてこったいマジで告白みたいじゃねえか。 マジである。俺はこれから、正真正銘の告白をする。 音無にとっては迷惑な話かもしれないが、ここで引いたら男じゃない。昨日みんなが応援してくれたように(吹雪は論外)、俺もここで勇気を出さないと。 なにより。 あれだけしてもらったのに何も行動を起こさなかったら、まず間違いなく鬼道にフルボッコにされる。もしくは久遠監督がこの世から消される。それはまずい。 そういうわけで、現在に至る。場所は宿舎裏。まだ練習前だが、他のみんなは今ごろ朝食をとっているはずだ。まず人に見られることはない。 音無「どうしたんですか?話なら食堂でも良かったのに」 名前か名字「まあ…あんまし人に聞かれたくないことだからな」 音無「そうなんですか?ははは、これじゃまるで告白みたいですね!」 名前か名字「……告白だよ」 音無「え?」 名前か名字「音無、俺さ」 すう、と息を吸い込んだ。 今こそ、伝えるんだ。 名前か名字「俺、音無のことが!!す………すっ」 久遠「名前か名字」 名前か名字「っでぇえええ?!監督ぅうううう?!!」 まさかの登場! 音無にようやく伝えたと思ったらまさかの!しかもよりによって監督?!いやいやいやバッドタイミングとかそんなレベルじゃない 名前か名字「やっぱり監督と音無は……!」 音無「へ?」 名前か名字「昨日、偶然見たんだ。その……音無と監督が、」 久遠「誤解だ」 名前か名字「まだ言ってないんスけど」 久遠「想像はつく」 音無「そ、そうですよ!監督と恋人になるなんて地球が爆発してもありえないです!」 久遠「……」 名前か名字「言い方考えて音無!監督すげえ涙目!!」 音無「はわわわわ!ご、ごめんなさい!!」 久遠「……いや、いい。そんなことよりも名前か名字」 監督がじりじりと俺に近づき、ガッと肩を掴んだ。うん、すごく痛い。ぎりぎりぎりぎり言ってるからな?俺の肩の骨粉砕フラグ? 久遠「冬花が、反抗期なんだ」 名前か名字「………は?」 この世の終わりというか、世界の絶望を一手に抱え込んだみたいな顔した監督の口からでた言葉は、顔と一致せずなんともくだらないものだった。 そりゃあね、14なんて年頃の娘を持ってればね。そりゃ反抗期も一回は来るさ大人の階段なんだから。 名前か名字「だから何スか」 久遠「冬花が足りない。娘が足りない」 名前か名字「なんだその変態オヤジ発言!!キャラの方向性見失いすぎだろ!!」 久遠「ほんの一月前までは笑ってお父さんの背中を流してくれていたのに……!今は下着をわけて洗濯する始末……!」 名前か名字「ああ、まあ……うん」 久遠「そういうわけで音無との抱擁に至る」 名前か名字「いやどういうわけだぁああああ!!!騙されねえぞ俺は!!!」 音無「なんでも娘成分補給らしいですよ?」 名前か名字「お前も思春期の女子なら断れ!!隙だらけだと変なおっさんに連れてかれるぞ!!」 久遠「おい、それは私のことではないだろうな」 名前か名字「一歩足を踏み入れかけてることは確かです」 久遠「名前か名字、私はどうするべきだろうか。いつまでも音無に頼っていてはまずいとわかってはいる。しかし私は……冬花に嫌われたら一生の終わりだもうしぬしかない」 名前か名字「……まあそれはないと思うけど。わかりました、あとで俺から話しときます」 久遠「……本当か?」 名前か名字「まあほら、女子がいずれ必ず通る道ですから。気長に行きましょうよ」 久遠「………わかった。では、私は先に宿舎に戻ろう。…………絶対だな?」 名前か名字「しつけえ!!」 ちょっと厳しいかもしれないが、この人も父親なら娘の成長を遠くから見守ることも必要だろう。とぼとぼと宿舎に帰る監督の寂しげな背中を見てそう思った。 というかどんな理由があったにしろ音無に抱きつかれるとか羨ましすぎて嫉妬するなという方が無理。そんなに人間できてない。 音無「ところで名前か名字さん」 名前か名字「ん?」 音無「さっきの話の続きなんですけど……」 名前か名字「あー……」 にこにこと俺の話の続きを待つ音無もかわ……ごほん。だけであんな所で邪魔が入ったら伝える気も失せるわな。 というか監督とのあれが誤解だってわかったことだし、無理にいま伝えることもない。うん、そうだ!実に晴れ晴れとした気分。 名前か名字「いや、今日はやめとく」 音無「へ?」 名前か名字「話の骨も折れちまったし。ちゃんと、いつか絶対いうから」 そうだ。 焦ることなんてない。 恋愛は気長に待ったもん勝ちだ。いま言って玉砕(仮)するよりも、もっと好感度をあげてから挑む方がいいに決まってる。ときメモとかやったことはねえけど、たぶんそんな感じなんだろうな。恋愛パラメーターが勝率的な。 音無は目を一瞬丸くして、それからやれやれ、と大きくため息をついて苦笑いした。え?苦笑い? 音無「はあ〜……わかりました。名前か名字さんって本当に奥手なんですね」 名前か名字「ん?」 音無「あはは、待つのはやっぱり性に合わないので、私から言います」 名前か名字「は?」 音無「私、名前か名字さんのこと好きです!お付き合いしてください!」 名前か名字「………は」 音無「一応言っときますけど、私そんなに鈍くないんですからねっ!」 名前か名字「…………なっ、」 ええええええええry |