諸君、以前俺には嫌いなものが三つだけあるという話をしたが、覚えているだろうか。忘れちゃったそこの君は第一話をもう一回見直してくれ。





誰にでも弱点はある





本日の天気。あめ。
飴?とか思ったおバカさんの頭には俺がたらい投げつけに行くからそこに正座して待ってなさい。

冗談はここまでだ。雨。それもライオコット島ではすごく珍しいほど激しい豪雨らしい。今日の練習は当然中止になって、午後過ぎからは宿舎で待機ってことになった。
みんなは、特に円堂なんかは「練習できないなんて……飛鷹の尻を拝めないじゃないか!」と窓の外に向かって叫んでいる。うん、日本のゴールキーパーもうやめれば?

で、俺はというと。



名前か名字「………」

吹雪「あれ、どうかしたの名前か名字くん?」

名前か名字「べ…別に……」





やばい。超やばい。

何がヤバイかってもう、外の天候的にやばいだろ。あれがくる。絶対にあれがくる。

確かにね、中二にもなってあれが怖いって男としてどうかと思うけどね。やっぱ小さい頃に植え付けられたトラウマとかどうしようもないしね。つまり、


雷、超怖い。



風丸「なんだ名前か名字、お前もしかして雷ダメなのか?」

名前か名字「ああダメだ…目の前に落ちてきたあの日のことを思い出すと身の毛がよだつ…!」

吹雪「へえ、何か意外」

豪炎寺「グリーンピースがダメなのは知っていたが…」

名前か名字「ああ、お前ら電波の次に嫌いだ…!!」

風丸「なんだ喧嘩売ってるなら最初からそういえばいいのに」


って言われても事実だから仕方ないよな!
別にな、こいつらにどう思われようが俺はかまわないわけですよ。「雷怖いとかださいねっ!」とか鼻で笑われたって(主に吹雪に)、「いつまでたってもお子ちゃまだなっ!」とか鼻水つけられたって(主に風丸に)、かるーく受け流して終わりだ。シカトすりゃいいだけの話。
でも、こんな情けないところはどうしても見られたくなかった人は、いる。


音無「大丈夫ですか?」

名前か名字「ああ…音無は雷平気なんだな…」

音無「ビックリはしますけどね」


と笑って俺にお茶を差し出す音無の笑顔が眩しい。
ああああああ音無にこんなところ見られるなんてもうダメだ死ねる。鬼道がニヤニヤしながらこっち見てやがる。畜生俺は諦めたわけじゃねえぞ!


風丸「名前か名字、音無にこんな所見せてのうのうと生きていくつもりか?」

名前か名字「しねって?そう言ってんのかお前。ふざけんな風丸より先には絶対くたばってやらねえ」

風丸「いや、どっちにしても鬼道に抹殺されるぜ!」

吹雪「シスコン患者は周りが見えなくなるからね」

名前か名字「……」

吹雪「もう夕香ちゃんに乗り換えれば?」

豪炎寺「ふざけるな断固阻止」

風丸「そうだぞ、夕香ちゃんは俺が目をつけてるんだから」

豪炎寺「えっ」

吹雪「妹がライバルとかどこの少女漫画」

名前か名字「少女漫画でもねえよ、どっちか片方同性愛者になるじゃねえか」

吹雪「それはそれで大人のお姉さまが喜ぶからいいんじゃない?」

風丸「まあ俺の美しさをもってすればり○んもマーガ○ットも俺中心の雑誌になるだろうな!」

豪炎寺「さすがっス」

名前か名字「論点ずれてんだろ。あと豪炎寺はお口チャック」

風丸「ここは音無に直接聞くべきだと思う」

吹雪「何を?」

豪炎寺「りぼ○派かマー○レット派か」

風丸「ちげえよハゲタカ分子レベルに分解されちゃえ!」

豪炎寺「激しすぎる罵倒乙」

風丸「音無に『名前か名字みたいなヘタレうんこ男をどう思うか』……聞こうぜ!」

吹雪「賛成」

名前か名字「………は?」



ちょ…待てぇぇぇ!

それはおまっ、返答次第ではマジで俺の命の灯火がああああ!っていうかヘタレは合ってるとしてうんこ野郎ってなんだ最低なけなし文句だな!


風丸「おーい音無、この名前か名字うんこもどきをどう思う?」

名前か名字「おまっ、女子にんな単語使うな!っつかもどきって、俺の存在は排出物以下か!」

音無「え?かわいいと思いますよ?」



は?
かわいい?



音無「?雷が怖いってところですよね。ちょっと子供っぽくてかわいいと思いますけど」

名前か名字「え、ああ、そう」

音無「あ!いや、これ誉めてるんですよ名前か名字さん!」

名前か名字「あ、うん、わかってる…どーも……」


かわいい…子供っぽい…
俺、先輩なのにな……

慌ててる音無を尻目に、吹雪と豪炎寺がドヤ顔で俺の耳元でささやいた。



吹雪「青春って」
豪炎寺「甘酸っぱいな」



とりあえず二人ともマジで視界から消え失せてほしいと心の底から思った。





(雨は止んでも俺の気分は晴れません)


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