シアン色のベクトル


「わーいっ私ここの布団ー」

「じゃーあたしは右端いただきー!」

合宿の三日目の夜にしてもこのテンション。若いなーとか思いつつ、私はそれを見ながら明日の練習メニュー表を眺めていた。
忘れない内に今日の練習の反省点や課題、もらったアドバイスを思い出せる範囲でノートにメモしていく。
いつの間にか話は遠出特有のあの話題になっていた。


「でねー陸上部の羽山さん断ったんだってー」

「えーまじで!うわー、一途だねー」

「そういや佐々は誕生日結局彼氏にプレゼント渡せたのー?」

「あーうん、何とか行けた。向こうの後輩部員さんとかがかなり気を使ってくれちゃってさ」

「良かったねー!!」


あれだけハードな練習をした後でもここまで元気ならもうちょっと内容濃くしようかな、とか思っていると不意打ちが来た。


「透ー。今日黒子君の誕生日だけど合宿来る前にプレゼント渡したー?」


・・・・・・。・・・・・・・・・!?
皆の会話には耳を傾けていたが、これには驚きを隠せない。


「えっ!?ちょっ!!待って、黒子君って2月の5、6日辺りじゃなかったっけ!?」

「何言ってんのよ、今日よ今日。1月31日だっつの」

「うっそ、間違えて覚えてたっ!?」

思わず頭を抱えたくなる。うわー、誰と誕生日を間違えてしまったんだろうか。
クラスが同じで、偶々読む本のジャンルが一緒である事を知り、本の貸し借りをする仲であり、お互い部活の合宿や大会で休んだ分のノートを見せ合う事も少なくはない。
しかし、随分前に過ぎた私の誕生日に黒子君からはプレゼントを戴いてしまっており、そのお返しのプレゼントを前もって買っておいたのに渡せていないというこの事実。
慌てている私はニヤリと笑うチームメイトの友人達に気づいていなかった。


「チャラッチャッチャー!!ここに、透さんへお電話が繋がっておりまーすっ!!
 さっき飲み物買いに行くって言ってたよね?お話しながらでも買いに行って下さいな!!」


やったら元気に言われてちょっと引いたが、確かに飲み物を買いに行くには切が良いので携帯を受け取って投げてもらった財布を掴み、部屋を後にした。

誰と繋がっているのか気になったが、まさか親とかはないだろうと自分に突っ込みをいれつつ話しかけてみた。


「も、もしもし?」

「もしもしこんばんは、黒子です」

「っ!」

嵌められたか!?と心の中で思いっ切り叫ぶ。言わなくてはいけない事があるだろ自分!!と奮い立たせ


「こんばん、は。あのね、えーと」

「はい」

「お誕生日おめでとう。実はプレゼント用意しておいたんだけど誕生日を2月の頭と勘違いしてました、ごめんね」

「いえ、いいんですよ。今お祝いの言葉をもらいましたし」

「ちゃんと聞いておけばよかった・・・本当にごめんね。あぁもう本当に申し訳ない」

「気にしていませんがただ。直接言ってもらいたかったとは思いますね」


日頃顔を合わせて喋っているからか、電話で会話すると何故か凄い照れる。


「私も直接言いたかったなー」


それから飲み物を買い終わっても10分前後は廊下に居座り世間話を続けた。

「ごめん、部活で疲れてるよね?つい長話しちゃった」

「いえ、僕の方こそ長話をしてしまって」

「また、ノート見させてもらって良いかな?
あとね、次のテスト範囲の古典が解らないから解説もお願いしたいなぁーなんて」

「いいですよその代わりと言っては何ですが、今度。そうですね、テストが終わった辺りに一緒に出かけませんか?」

「お安い御用だよ!テスト明け楽しみにしてるね」


どちらともなくお休みなさいと言って電話を切る。
ちょっと温くなってしまったスポーツドリンクで喉を潤し、部屋へと歩みを進めた。



(透はいつになったら黒子君の思いに気が付くと思う?)
(さぁ〜。卒業まで気が付かなかったりしてね!)
(((((・・・なんかありえそうだな/ね)))))
(黒子君ドンマイ)


遅れましたが黒子っちハピバ!!


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