坂田銀時/ag


 カバンの底で息を潜めているあれと、自分の心、どちらを先に曝け出そうか。

私は近日、一世一代の告白をしに行くつもりだった。色々考え、新撰組のあの人へ向けて恋文でもしたためてみようと筆をとる。とりあえず相手の名前を一番初めに書いてみて、そこから何も浮かばなかった。自分の文章力の乏しさに絶望しながら、私は万事屋の扉を叩く。こういう時は銀さんに相談だ。何でも屋なのだからきっと何か助言をくれるはず。という期待は微塵もなかったけど何故か彼に話を聞いてもらいたくなった。新八も神楽もいない部屋に入れてもらい、あの人の名前だけが書かれた便箋と封筒を取り出す。そして私は私の抱えている問題についてお話する。私が話を終えると彼は机の上に置いた便箋を一瞥して、頬を掻いて、溜息を吐いた。長い長い溜息だった。それから便箋はびりびりと破られてしまった。腹が立って拳骨を食らわせるとその腕を掴まれ、引きずられ、襖を開いた向こうの部屋に放り投げられる。間が悪かったのだ。運がなかったのだ。こんなことなら、何も知らないままでいたかった。

仰向けの体勢で抱えられた両腿。冷えた空気にさらされている身体は鳥肌が立ってしまっている。ぎらぎらした目で銀さんは、顔を近づけてくる。

「いよいよ入れられちゃうけど、今どんな気持ち?」

焦らすように割れ目に軽く押し当てられる。肩で息をするのが精一杯だ。はじめは必死になって抵抗したけど、力で押さえつけられてはどうしようもない。どんな気持ち?悔しい、悲しい、気持ち悪い、あと何だろう。何て言えば貴方は傷ついてくれるだろう。万年床に組み敷かれ、乱暴に着物を剥ぎ取られ、昔の想い人にいいようにされる気持ちとは、ああ、言葉にできない。

「そんな怖い顔して。何?書き直したけりゃ書き直せばぁ?お前が投函出来ないように俺町中のポスト見張るの日課にするわ」
「言わなきゃ、よかった」
「こっちの身にもなって欲しいもんだ。話が終わるまでよく堪えた思うよ銀さん」
「だってそんな知らなくて、うあ、」
「ん、さきっぽ出し入れされるの好き?」

そんなわけない。ただ浅く出し入れされる度に微かな水音が聞こえて死にたくなる。布団を手繰り寄せて顔を覆おうとすると、彼の手がそれを阻んだ。

「よく見てろ」

ゆるゆると具合を伺うように動いていたものが奥を思い切り突き上げて来て、息を呑む。腰を動かされながら、両腿を少し上に抱えあげられると、さっきよりも刺激が強くなる。おなかの裏っかわを引っかかれているような感覚。繰り返し繰り返し。いやだ。変な気分になる。何か迫ってくる。こんなのいやだ。

「意外に、切なげな声で鳴くなぁ」
「や、やだ、いや」
「かわいい」

熱に浮かされたような、心底興奮しきった顔。彼の熱い舌が顎から頬を行ったり来たりする。顔を背けようとすれば唇に強く吸い付かれ、息も出来ない。揺さぶられ感覚の波がどんどん迫ってくる。身体がばらばらになってしまいそう。それでもまだ私は考えていた。彼を傷つける言葉。嫌われるための言葉。こんなに間の悪いことってあるだろうか。単なる気持ちの行き違いだ。機から見れば取るに足らない、掃いて捨てるほどある陳腐な話。それなのに目の前の男は、こんなにも余裕なさげな顔をしている。そうして、いつまでもぐずぐずしている私の考えを見透かして吐き捨てるのだ。

「嫌わせてくれよ」

堪えきれず上り詰めながら、必死に彼にしがみつく。自分のじゃないみたいにびくびくと痙攣する身体。銀さんは未だ果てていない様子で、私の仰向けの身体をひっくり返そうとしている。私はひゅうひゅう肺から息を絞り出すだけ。あの手紙、どうしよう。

本当に儘ならないことばかりだ。


ソウ



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