ドライラブ(?)


「本当にお前ら恋人なの?」

なんてことはよく訊かれるんだけど、普通に俺とあいつは恋人だ。
ただ、ちょっと甘ったるい雰囲気が嫌いなもの同士だからじゃない?




「奏人、おいで。」

「んー・・・お前が来いよ」


例えば、俺がうとうとしてるとき。(それはソファーとかベッドとか事後とか色々)

必ず蒼太が「おいで」って言うから俺は「やだ」って言う。
だってなんか、子供扱いされてるみたいで嫌だから。


「かなと、」


それでも俺は、あの万人受けする美人顔が好きだから、二度目の拒否が口に出せない。
あいつの俺を呼ぶ声が甘ったるくて、それにどろどろ沈みたくなるんだ。

そしたら蒼太は珍しいくらいに優しく抱き締めて、俺の背中を叩いて眠りに誘い込んでくれる。
それが多分一番好き。




はたまた例えば、蒼太がイライラしてるとき。

あいつの綺麗な顔がむすっとしてるのを見てるとつい、もっと歪めてやりたくなる。
から俺はちょっかいを出しに行く。


「蒼太、みんなバスケしに行くって。蒼太も行かねぇ?」

「・・・・・・いい」


教室にいるのにイライラがわかるのがおもしろい。普段、人がいる前では感情とか隠すタイプなのに。


「なんで?」


ニヤニヤしながら目の前に座ってやる。
周りにいたやつらはもうみんな中庭で、もう放課後だから俺らの他に人はいない。ただまあ、廊下とか隣の教室には人がいるけど。


「・・・・・ウザイ、奏人。」

「え?何?」


小さな呟きも聞こえるけど、俺は笑顔で聞き返す。
また顔をしかめるのが非常に愉快だ。


「・・・・・・俺がイラついてんのわかるだろ。奏人だけでやってこいよ。」


非常に、愉快だ。
あともうちょっと。


「蒼太、」

「・・・・・何」

「キスしようよ」


あーやっぱり、驚きなんかしないでめっちゃ嫌そうな顔するところがそそられる。

俺ら、恋人だよね?


「かな」


急に蒼太の手が伸びてきたと思ったら。
頭をがっしりと鷲掴まれた。


「──ってぇなおい」

「・・・・ん?何?」


鷲掴まれて顔を上げられれば、ニヤリと笑った蒼太が覗いてくる。
なんか余裕そうな顔がウザくなったから、咄嗟に伸ばされている腕を掴んでやった。それでも離れないからウザイ。


「かな、キスして欲しいの?」


こいつが俺を"かな"って呼ぶのはセックスしてるときか俺をからかってるときだけだ。

だから余計にウザイ。


「別にいい。蒼太からかっただけだし」

「ふーん・・・?」

「手ェ離せよ」

「やだよ」


俺が顔をしかめると、蒼太は逆に笑顔になった。
あぁもう、やだ。結局かよ。


「・・・・ねぇ、かな」

「なに、──んっ」


いつのまにかあの手は後頭部に回っていて、それに引き寄せられたら敵わなくて───

離れた唇を見ていたら、それの両端がきゅっと持ち上がった。それを見て我に返る。


「俺、帰るけど?」


ニヤリと笑った顔がウザイ。
さっきまでのイライラは俺に移されたみたいだ。


「──俺も帰るっ」


だから、思いっきり肩をはたいておいた。





俺らは、恋人だ。


 

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