せやな死んだらあかんねんな、繰り返した声の調子に涙がでそうになる。諦めてるのと多少違っても、わたしにその結果は同じに思える。
 覚悟。
 士道というよりいくらか分かりやすいはずなのに、この瞬間まったく分かち合えずにいる。そんなもんいらないからと手をつかんだら、踏みにじることになるだろうか。
「歩ちゃん、」
 続ける言葉が浮かばない。手の中の玉ねぎに目をおとして、力任せに皮をはぐ。かさかさ乾いた音があってよかった。沈黙が重い。白く固い芯に指をたてる。
 瞼の奥を刺す痛みに抗えず涙がこぼれた。