百花繚乱 | ナノ

     『色彩』



[1]

 昔々あるところに青年がおりました。青年の名は『緋翠』といいます。その名に相応しく右目は赤色、左目は緑色をしていました。
 緋翠は誰よりも優れた人間でした。何をするにも苦労を伴わない、そんな完璧な人間なのです。それ故に自分の人生のつまらなさに苦悩していました。努力などする必要もなく、達成感なども味わえず、何でもそつなくこなしてしまう自分が嫌になりました。
 それに気付いた母は言うのです。『では、貴方が退屈しないモノをつくってあげましょう』と。緋翠は出来るものならやってみろと挑発の意を込めて微笑みました。それはそれは綺麗な笑みでした。
 母が緋翠に用意したのは『世界』でした。彼女が彼のために創った世界です。
 これには流石の緋翠も驚きました。そして出来たばかりの法も秩序もない世界に放り込まれたのです。


[2]

 世界を創った母は大樹となり、世界の心臓となりました。その大樹は大樹から生まれた老いることのない黒月芽瑚に守らせることにしました。
 長い黒髪に赤い瞳の少女は緋翠の護衛として『彩(サイ)』と『色(シキ)』を作りました。芽瑚は彼らに自分の能力を分け与えました。彼女の役目である大樹を守る力だけは残してありました。
 芽瑚は緋翠と関わるうちに彼女にはなかった『こころ』というものを手に入れました。しかしこれは後に彼女を苦しめることになりました。


[3]

 やがて緋翠は老いて死んでしまいました。彼は『芽瑚や彩と色と過ごせて楽しかった、ありがとう』と最期に言い残し消えていきました。
 老いることのない芽瑚は悲しみに暮れました。同じように老いて死ぬことが叶わないことを嘆きました。
 それを傍らで見ていた彩と色は彼女と同じく老いることがありません。しかし彼らは大樹を守るという役目がある芽瑚とは違い、緋翠の護衛という役目を終えてしまいました。生きる意味がなくなってしまったのです。作られた命は作られた意味があってこそ生きていける。
 彼らは決意しました。


[4]

 彩と色は芽瑚に与えられた能力を人間として名前を与えて生かすことにしました。
 彩は自分の身体を武器化させる能力を『赤崎』と名付け、先見や読心術などの能力を『森山』と名付け、彩の能力を二分しました。後に彩の家系と呼ばれます。
 色は『暁』『青柳』『翠川』『白百合』『霜月』『黒薔薇』『音無』と名付け、色の能力を7つに分けました。後に色の家系と呼ばれます。
 そしてお互いの老いることのない命は別の世界の少女に授けました。その少女こそ後にこの世界を治めることになる福沢理子なのです。彩と色の希望の光である年端のいかない少女はやがてこの世界に招かれ、ウォラルド・フルールの物語が幕を開けるのです。


[5]

 さいのかけいのひみつ。
 さいはさみしがりやでした。だからわすれられないようにあかさきともりやまにじぶんのちをいれました。ちをとおしてしそんとのこうりゅうをはかったのです。それはみごとにせいこうしました。しかし、ちをうけついだこは10もみたずにしんでしまうのです。それだけではなくあたえられたのうりょくすべてをつかいこなせてしまい、きけんしされてしまいました。やがてりょうけのあいだであらそいがおきました。『さいにあいされしいみご』ぼくめつのためのあらそいです。
 のちに『さいにあいされしいみご』はもりやまけに生まれたあかきしょうねんをさいごにきえさります。そしてじょじょに、せかいがへいわになるにつれ、のうりょくはれっかしていくのでした。
    
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