どうしてあのひとは、
穏やかに微笑むひと
明るい空気をもつひと
伸ばされた白い掌に
迷いもなく重ねた自分の手
温かくて
眩しくて
嬉しくて
そして涙がこぼれた
苦しかった
寂しかった
哀しかった
優しい瞳の奥に
言葉では表せない濃い色を
見つけてしまったときから
自分では優しいあのひとのその色を
わかってあげることができないと
気づいてしまったときから
ずっと
この言い表せない感情が
心の奥底で渦巻いている
どうしてあのひとは、
涙を流さない
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